登録半年で開業、そしてネット分野専門を切り開く凄腕弁護士

インタビュー

ITやサイバー系の業務で全国トップクラスの実績を持つ中澤氏に、一つの業務で専門性を持つことの意味について伺いました。

事務所勤務半年で弁護士「即独」

【編集部】 

本日は弁護士法人戸田総合法律事務所代表の中澤佑一先生です、中澤先生の事務所はITやサイバー系の業務で全国トップクラスの実績をお持ちで、2013年に出版した書籍、『インターネットにおける誹謗中傷対策マニュアル』は弁護士会館ブックセンターのベストセラーランキング1位を獲得しています。今は弁護士も7名雇用し、今まで採用した弁護士は一人も辞めたことがないそうです。そのあたりの採用、組織論、開業に至るまでの軌跡などを幅広くお聞きしたいと思っております。

【中澤氏】
もともと大学の学部では文化財関係の分析化学をやっていました。あまり就職口がなく、学部の段階でどうしようかと考えていたのと、サラリーマンには向いていないと思ったので、資格を取ろうと思いました。当時ちょうど法科大学院の話が出ていて、司法試験を通れば食いっぱぐれることはないだろうと思いロースクールに行き、幸い受かりました。司法修習を経て事務所に就職しましたが、人に使われるのはやはり向いていなくて、すぐ辞めました。そのため、登録して半年くらいで開業したということです。

【編集部】
弁護士さんは事務所でキャリアを積んでから開業される方が多い印象で、すぐに開業するのはかなりレアだと思いますが、同じくらいで独立される方はいましたか?

【中澤氏】
うちの業界ではすぐに独立することを俗に「即独」と言うのですが、ほぼそれに近い形だったので、確かに早いほうでした。友人で一人即独した人がおり、彼は弁護士登録前の司法修習中から即独すると言っていて、私が事務所を構えようと思った時にはすでに自分の事務所を構えてしっかり経営者としてやっていたので、彼にいろいろ聞きながら独立の準備を進めました。

【編集部】
社会人経験もビジネス経験も、法律的な弁護士業務もあまり経験を積まずに独立されたと思いますが、独立後のスタートダッシュはどのような感じでしたか?

【中澤氏】
独立して一番苦労するのが、案件がないことです。案件がないと経験が積めなくて実力がつかない。実力がないとどうしてもうまくいきません。どこかの段階で、実力も経験もない中で案件を取らなければいけません。何とか1件でも案件を取れれば、そのなかで経験を積むことができ、サイクルが回り出すのでなんとでもなりますが、最初の案件を取るというのは実際なかなか大変でした。ウェブの集客をして、そこで記事を書いたりして幸い1件きました。

【編集部】
最初にやろうと思われたのは何業務ですか?

【中澤氏】
埼玉の戸田市に事務所があるのですが、独立した当時は市内に弁護士事務所はなく、1件しか弁護士事務所がなければ何かしらくるだろうと思っていました。そのため当初は何かに特化するつもりもなくやっていましたが、開業3か月くらいからからインターネットの分野を意識的にやるようになりました。

1~3年目の集客の90%以上はウェブ集客

【編集部】 

最初の集客はウェブでというお話でしたが、最初からウェブ集客を考えて取り組まれていたのですか?

【中澤氏】
ウェブくらいしか思いつかなかったというのもあります。

【編集部】
それが想像以上にうまく行ったというところもあるのですね。さっきこのインタビューの前に、お客さんが来すぎて業務をストップしたというお話がありましたが、相当嬉しい悩みですよね。どこからそんなにお客さんを引っ張って来たのですか?

【中澤氏】
1〜3年目くらいまでは90%以上自分で作成した事務所のウェブページからのお問い合わせでした。

【編集部】
ウェブにおける競合があまりいなかったというのが大きいんでしょうかね。今、広告単価もすごく上がって来ていますし、ウェブの状況も変化していると思います。今開業される方が前と同じようにできるかと言われるとそうでないかもしれません。どうですか?

【中澤氏】
私がやっているインターネットの分野に関しては、当時と同じようにはできないと思います。競合も増え検索連動広告などをかなりの広告単価をかけてやっているところが増えました。今から入る人は相当に広告費をかけないと案件を獲得するのは難しいと思います。しかし、何かしらこういう分野はありますので、ネット以外のブルーオーシャンの分野を探せばいいのではないでしょうか。

【編集部】
やはり新しい、当時だとサイバー系の案件、風評被害を解決するだとか、そういう需要が出始めていたということですね。

【中澤氏】
そうですね。当時は弁護士にはそんなこと解決できないでしょ、という感じだったので、解決策を出すと目立ちました。

【編集部】 
一年目から案件がたくさん来て、自身でやれる量が限られている中で、採用という話になると思いますが、どのタイミングでどのようにされましたか?
 
【中澤氏】
開業して半年は創業弁護士二人でやっていましたが、半年後に事務局を入れて、1年くらいやったところでちょうど案件が多すぎて止まってしまい、弁護士を採用し始めました。最初は中途の弁護士を入れ、そのあとは新卒です。
 
【編集部】 
人が辞める、ということに課題感を抱かれている先生もたくさんいる中で、7年間離職する人がいないというのはなにかコツがあるんですか?

 
【中澤氏】
特別なことは基本ありません。強いて言うと弁護士の執務スペースを個室にしていないので、雑談をしながら、わからないことがあったらすぐに聞ける、物を言いやすい環境であることが大きいと思います。
 
【編集部】 
中澤さん、怒ったりしなそうですもんね。割と風通しのいい、働きやすい職場になっているということですね。

 
【中澤氏】
怒ったりはしますよ。働きやすくするためにしているわけではないのですが、情報量が勝負の商売なので、他の人がやっていることも横で見て聞いて自分の経験にする、ということが大事です。
 
【編集部】 
新卒の採用を行なっていらっしゃいますが、業務をこなせるようになるまでの教育は大変だと思います。どういう風にされていますか?
 

【中澤氏】
うちでは基本的にまずネットのものを一人前にできるようになることがマストです。ネットさえできればあとはついてくるという考え方でやっています。最初に法律相談の場面から契約書を作って請求書を作って、訴訟、という一連の流れを模擬事例で一巡する研修を行っています。この研修は弁護士だけではなく事務局にもやってもらっています。それが早ければ1ヶ月くらいで終わり、そこから現場に出し、先輩と一緒に案件に取り組みます。一年くらいで一人前になればいいかなという感じのスケジュールです。
 
【編集部】 
弁護士業界だとスキルアップのスピードが速いようなイメージがありますが、他の弁護士事務所とは違うなというところはありますか?

 
【中澤氏】
弁護士としての平均点くらいまでは研修などのフォローで持っていき、そこから先まで行けるかどうかは個性や才能かなと思っています。一年で一人前になるのは他の事務所と比べたら早いかもしれませんが、分野が特殊で仮処分の手続きを多用するので、通常の訴訟よりも回転が速いのです。弁護士の業務は一件通してやって一つの経験になると思っています。そのため大きな訴訟をいくら担当していても、途中の段階では大した経験値にはなりません。判決など最後まで進めてみないと、経験できない部分が大きく、訴訟を100件今抱えて忙しくやっていますという人がいたとしても途中の案件ばかりなら成長や経験という意味ではあまり意味がないと考えています。
とにかく、我々の商売は経験がものを言います。経験とは単に案件に関わった時間に比例するものではなく、そこから何を学ぶかが問題です。

セカンド顧問というポジション

【編集部】 

他業務への派生はあるのでしょうか。
 
【中澤氏】
入り口はネットで、クライアントの多くは顧問弁護士がいらっしゃる会社が多いのですが、顧問弁護士に相談しても要領を得ないということでご相談いただくケースが多いです。少なくともこの分野に関しては当事務所の対応はスピード・結果ともに高いクオリティを維持できていますので、クライアントからは高い評価をいただいています。高いクオリティの仕事が提供できると、その後「顧問の先生には相談しづらいんだけど」という形で他の相談もいただき、セカンドの顧問に入るというのがうちの一番多いケースです。
 
【編集部】 
やはり一つ強い業務を持たれたことがすべてのきっかけになられているんですね。今ポジションが確立されていると思いますが、ポジションができたのは開業何年目くらいでしょうか。

 
【中澤氏】
ここ3〜4年くらいです。私が本を出して、その本がある程度売れたことが大きいです。
 
【編集部】 
まさに徐々にできてきたブランドだと思いますが、一気に来たきっかけと考えると、書籍の出版だということですね。この出版はどういうきっかけでなされたのですか?

 
【中澤氏】
目的としてはブランディングを考え、一冊本を出そうと思っていました。もともと所内向けにノウハウの共有のために作っていたマニュアルを出版社に持って行き、汎用化して本にして出させていただけないかと言いました。タイミングがすごく良かったらしく、私より先にやっている弁護士は何人もいるのですが、私が本を出す2年前くらいに企画書を出した先生は門前払いされたらしいです。一度、私の本が出て売れたので、そのあとはたくさん同じテーマの書籍が出始めました。
 
【編集部】 
今だとその本は弁護士さん向けですか?一般の方向けですか?

 
【中澤氏】
一応一般の人も使えるように簡単に書こうとはしていますが、裁判の話も多いのでメインは弁護士ですね。
 
【編集部】 
そうなると弁護士さんからの相談や紹介も多いのですか?

 
【中澤氏】
多いです。うちに顧客を紹介してくれるメインの層は弁護士です。

ウェブ集客だけでなく紹介を増やし事務所安定へ

【編集部】 
そういった弁護士のネットワークは一つの集客チャネルであったりもすると思いますが、繋がり作りという面で意識的にされていることはありますか?

【中澤氏】
集客をウェブに頼っているだけでは安定しないので紹介を増やしていこうと考えています。面識のない弁護士にいきなり案件を流すというのは、弁護士の業界的にはあまりないので、なるべくいろんなところに顔を出して挨拶ついでに自分のやっていることをアピールしています。
 
【編集部】
中澤さんはこれが強いというのがわかりやすいので、紹介も得やすいのだろうと思います。あとは最初二人で創業されたということですが、僕たちの会社も友達4人で立ち上げて、トラブルを乗り越えて7,8年やっています。今までお二人の関係は問題なくやっていらっしゃるのですか?

 
【中澤氏】
心配されますが、特に問題なくやっています。
 
【編集部】
その方とはどういった関係だったのですか?

 
【中澤氏】
最初に入った事務所の同期です。
 
【編集部】
では友達のような関係だったのでしょうか。

 
【中澤氏】
友達ではないですね。
 
【編集部】
なぜ一緒にやろうと思ったのですか?

 
【中澤氏】
何人か一緒に事務所を辞めたのですが、みんな人に使われるのは向いていないという話になり、最初は3~4人くらいでやる話があったのですが、ビジョンの違いがあって最終的に二人になりました。
 
【編集部】
何人かで始めてばらけて行く方がいる中で、最初から二人で始めて問題なく7年間やられていることが面白く珍しいなと思います。なにか心がけていらっしゃることはありますか?

 
【中澤氏】
あまりないです。お互い能力に信頼があるというのが大きいと思います。
 
【編集部】
経営上の意思決定はどうされていますか?

 
【中澤氏】
今は、一人アソシエイトからパートナーに昇格させた者がいるので、3人パートナー体制でやっています。月一でパートナー会議を行い、そこで正式な意思決定を行なっています。実質的には各自が拒否権を持っている感じで、誰も拒否しなければそのまま進んでいます。士業はプレイングマネージャーから抜けきれないことが多く、経営やバックヤード業務は後回しになりがちなので、やるといった人の意見はよっぽどでない限り進めてゆく方向が良いと思います。やらないよりは何かやるのが良いということです。
 
【編集部】
暗黙のルールになっているのですね。それでも絶対やる、と言って揉めたりはしないんですか?

 
【中澤氏】
反対があっても押し切る時はありますが、意見が分かれてどうのこうのというのはないです。すり合わせができています。
 
【編集部】
一人で立ち上げられる方と、二人三人で立ち上げられる方といらっしゃいますが、二人でスタートしてよかったと思う点があれば教えてください。

 
【中澤氏】
組織化して分業しても、トップでなければできない仕事があります。それを二人で分割できるのは楽ですね。あとは独立して事務所を作ると、とても寂しいのです。事務局を採用しても、弁護士同士で話さないとわからないこともあるので、話しながら進められるのは、特に経験がない時には安心感になります。間違いに気づくきっかけにもなります。私は、独立しようとしている人から相談を受けることも多いですが、、その時は法律実務について雑談できる人を作ったほうがいいと言っています。一人で独立する人も、何かしらリアルタイムで、LINEでもいいので仕事の話を雑談のようにできる環境をつくると楽ですね。
 
【編集部】
悩んで閉じこもってしまうとなにも解決しません。中澤さんたちはお互いの支え合いで困難を乗り越えていけたのですね。これまでとても順調に進んできていると思いますが、何か困難に直面したことはありますか?

 
【中澤氏】
結局、売上が思うように伸びないということですね。売り上げが伸びれば何とでもなると思います。幸い案件でトラブルはないです。

【編集部】
本日は弁護士法人戸田総合法律事務所代表の中澤佑一先生にお越しいただきました。ありがとうございました。 

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