経験者中心採用から理念共感型の採用で退職率0%へ導く税理士

インタビュー

退職率0%事務所を運営している渡邊勝也氏に、士業事務所の採用のリアル・理念経営について伺いました。

退職率ゼロに出来た理由とは

【編集部】 
税理士法人クオリティ・ワン代表の渡邊勝也先生にお越しいただきました。渡邊先生は税理士の業界で、「税務調査といえばクオリティ・ワン」と言われるようなポジションまで行き、今では月間20件の税務調査の立会いをされています。
【渡邊氏】
1973年生まれ、現在44歳です。独立したのは36歳の時で、今ちょうど創業から8年目になります。創業当初から税務調査に特化し、ウェブの「税務調査110番」というランディングページで全国から税務調査のご依頼をいただきました。2年で税務調査の売り上げ5000~6000万円になり、従業員も8名になりました。現在東京と仙台の2か所合わせて従業員20名になっています。税務調査の依頼を受けたお客さんを中心に顧問契約や、MQ会計、日次決算というのをベースに経営の支援をさせていただいております。
【編集部】
二年目から従業員を8名雇われているのはすごいと思います。渡邊先生の採用の仕方や、採用してどうやって従業員に定着してもらうのかということを教えていただけますか。
【渡邊氏】
初めのころはお客さんがどんどん増えてきて、仕事が溢れて採用という形でした。経験者中心に、私が面接をして気に入った人、具体的には、この人は体育会系っぽく、かつ働けるぞ、という人を中心に採用していました。しかし残念なことに創業4~5年目の退職率は激しく、常時半分は1年間で辞めていくような事務所でした。創業5年目は僕自身が仙台に事務所を構えてそちらに住んでいたこともあり、東京オフィスの退職率は80%でした。東京オフィスの代表社員が辞めるくらい離職率が高かったです。
【編集部】
そこからどのように改善していったのですか?
【渡邊氏】
なぜ辞めるのかと考え、お給料も安くないと思うレベルだったので、辞める理由はお金ではないのだろうなと思いました。その時に理念経営ということを教わりました。僕ももともとコンサル会社にいたので「理念では飯食えないよな」と思っていました。しかし、僕自身がなぜ税理士になったのか、何のために誰のためにこの仕事をしているのかということと向き合ったとき、自分の理念が明確になり、会社の理念が明確になりました。
そこで、同じようにメンバーにも人生の目的・理念があるということに気付きました。

メンバーになぜ居てもらわないといけないのか?
メンバーに何を成し遂げてもらいたいのか?

それをメンバー全員と共有ることによって徐々にメンバーとの距離感が近くなりました。

ありがたいことにその後2年半退職率ゼロになりました。

採用も、僕が決めるというより、1次試験で僕が面接をし、
事前に課題、例えば「脱税したいという方がいます。その人に対して、もしあなたがクオリティ・ワンの1メンバーとして関わるとしたら、どうしますか」というようなものを出します。

2回目の面接はうちのマネージャー、現場のリーダーが面接します。

「なぜあなたはクオリティ・ワンに入りたいですか」という理念プレゼンテーションをしてもらい、逆に従業員の方からは「クオリティ・ワンの良さ」をプレゼンテーションします。

3次面接は、面接を受ける人にクオリティ・ワンに入りたい理由を再度言ってもらい、
逆に僕が「なぜあなたにクオリティ・ワンに入ってもらいたいか」というプレゼンテーションをし、最終的に採用するという形に変わりました。

【編集部】
理念がどのようなものなのかも気になりますが、そもそも人が来ないという事務所も多い中、どのような取り組みをなさっていますか?
【渡邊氏】
確かに創業5年間は経験者を中心に採用したので、1回募集して平均5人くらいでした。それを経験ではなく、どんな「人生の目的」を持った人を採用するか?という「理念型採用」に変換しました。税理士経験者、会計業界専用の求人媒体ではなく、一般的な未経験者が応募するようなメディアに変えたところ、2週間募集して大体100人くらい応募が来て、その中から面接をすることになったので、本当に理念に共感してくれる人が来てくれるようになりました。そのための組織づくりとしては、未経験者でも育つような環境を作っていきました。具体的にはチェックリストやマニュアルを充実させ、教えるということの評価を上げ、育てる文化をクオリティ・ワンに醸成させました。

理念と個人の理念を一致させる

【編集部】
今どのような理念を掲げていらっしゃいますか?
【渡邊氏】
「税務・会計・経営を通じて、強くて健全な価値あるものを創造・支援して残します」ということをクオリティ・ワンの理念としています。
【編集部】
実際に先ほど渡邊さんご自身がおっしゃっていましたが、「理念経営で飯が食えるのか」という考えもあります。どのあたりから理念経営を採用していけるようになったのですか?
【渡邊氏】

僕自身ずっと今まで目標達成のためだけに命をかけてきました。例えばアメリカンフットボールやベンチプレスなど競技をしていたので、「相手に勝つ」「メダル獲る」。

勿論、目標を達成したときはすごく気分が良いですが、時間が建つと虚無感と孤独感があることに薄々感じてきていました。

しかし、その原因分からないまま、「もっと目標達成していけば自分の成功がある」と思ってひたすら高い目標を目指していましたが、やはり答えが見えていない。

そのとき、ある学びを通じて目に見えるものだけでなくて、目に見えないものがあるんだと学びました。

よく「居酒屋甲子園」を見ていて、とても感動して泣いている姿を見て、「わざとやっているのかな、おかしいよね」と思っていました。でも、それはみんなの気持ちや思いという、目に見えないものがあるからだと気付き、「自分たちはなにを目指していくのか=人生の目的=人生の理念・ビジョン」という目に見えないものをいかに目に見える形にして実践していくかを考えるようになりました。

目に見えないからこそ大切であり、だからこそ目に見えないままにしておくのではなく、目に見えるものにし、実践していく。
そこに感動があるのだとわかりました。これが自分の中の経営の転換点でした。

【編集部】
気付くタイミングがそこだったということですね。
【渡邊氏】
本当に苦しんでいたので、多分求めていたんだと思います。だから目に見えないものの価値を知ったときに「これをすぐに実践してみよう」と思いました。
【編集部】
今スタッフさんが理念に共感して、それに向かって長く続けてもらうために、具体的にやっていることはありますか?
【渡邊氏】
まず個人自身に個人の理念を持ってもらうようにしています。個人で理念とビジョン、目標を持って日々の実践に落とし込む。そして、個人の理念とクオリティ・ワンの理念のすり合わせをしてもらっています。クオリティ・ワンの理念と個人の理念が一致すると、仕事が自分の人生そのものになる。そして、私はその理念の一致は解釈だから絶対にすり合わせできると思っています。
例えば世界平和が個人理念のメンバーが、クオリティ・ワンの経営者に物資豊かになるような商品を提供して、経営者のメンバーも物心豊かになっていく。物心豊かになった先には、絶対いじめ差別虐待がない平和な世界がある。だからクオリティ・ワンでこの理念を追い求めていることは、自分の世界平和という理念実現につながる。クオリティ・ワンが自己実現の場であれば、自然と自分の成功=クオリティ・ワンの成功になる。だから、そのすり合わせのお手伝いをし、メンバーの自己実現を経営者として助けていくことが私の役割だと思います。
【編集部】
入社した際に一人一人が理念を持っていることは、一般的にはなかなかないと思います。そうするとまず理念を考えてもらって、そのすり合わせをするというところから始まるのでしょうか。
【渡邊氏】
そうですね。今までの採用は「見極める採用」でした。「この人のスキルはこれくらいだから、どれだけ役立って、いくらで採用するか」ということを見ていました。今は、スキル等ではなく「この人の人生の目的=理念・ビジョンはなにか」「この人の持っている可能性はなにか」「この人が理念を持ったらどれだけ素晴らし活躍をするのか」という、面接を受ける人の可能性を育てるという面接に変わっていきました。
【編集部】
最初は損得で判断していたように聞こえたのですが、今は損得ではなく「尊」「徳」のような、本当にその人を敬っていて、どれだけその可能性を広げていけるかという別の「尊徳」に変わっていらっしゃるのだと感じました。

圧倒的にWEBページにこだわる!

【編集部】 
もう少し組織論のお話も聞きたいところですが、次のテーマがあります。独立当時から現在にかけて、お客さんの開拓はどのようにされているのでしょうか。
【渡邊氏】
当初から税務調査の集客をWEB中心に行っていました。税務調査を依頼いただくお客様の安心感と納得感を提供できると、自然とお客さんになってくれました。そんな経営者は、昔のクオリティ・ワンと同じくメンバーとの人間関係に悩んでました。だから、経営者をどうしたらメンバーと力を合わせて成長できるかを考えたときに、クオリティ・ワンが個人と会社の理念を明確にして、理念の統合をして良くなったことを伝えてきました。税務調査から来るお客さんが、自分だけ勝つタイプから、メンバーを勝たせるタイプなっていく成長を見るのが、私たちの仕事の醍醐味です。もともと税務調査が入る会社なので利益は出ている。更に経営者がメンバーと人間関係が良くなったら、利益が出ないはずがないですよね(笑)
【編集部】
理念経営に共感してくれるお客さんはなかなかいないのではないかと思いますが、どうやってそのようなお客さんを見つけていっているのですか?
【渡邊氏】
「類は友を呼ぶ」です。基本的にはお客さんのご紹介です。「今まで利益しか見ていなかったけれど、理念経営をやって本当にメンバーと一緒に感動できる」と思ってくれたお客さんのご紹介です。多くの経営者が感動する組織を作りたいと思っているが、メンバーとの人間関係に悩んでいます。だから、人間関係が良くなり、感動する組織になれば、それを伝えたくなる。それがご紹介になっております。
この他に、セミナーで「人軸経営」の在り方と「MQ会計、日次決算」のやり方の両方をお伝えしています。それに加えて、未経験者を育成するためには育成の仕組みを作らないといけない。育成のために一番いいのは、チェックリストやマニュアルです。
クオリティ・ワンはこの3つを経営者に伝え続けています。
【編集部】
セミナーでは、ご自身が普段実践していることをお伝えし、その中で共感してくださった方が、声をかけてくださるということですね。独立時はウェブ集客だけだったのですか?
【渡邊氏】
そうです。初めの2年間はひたすらウェブの勉強をしました。心理学も含め、お問い合わせボタンは何色がいいか、右脳左脳の順番にしてお問い合わせボタンの設置をしたり、どういうキャッチコピーがいいかにはトコトンこだわりました。
【編集部】
その結果、当時ウェブ集客はとても成功したということですね。今はウェブとセミナーで比率はどれくらいですか?
【渡邊氏】
ウェブが7、紹介が3くらいです。
【編集部】 
今ウェブ集客を成功させるためにされていることはありますか?
【渡邊氏】
一つはリスティングです。何回かいろんな業者さんを使い、自分に合ったマーケティング会社と組むということです。あとはコンテンツ重視になってきているので、どういったコンテンツ、記事にするかということはすごく考えます。また、ウェブで集客するときに、お客さんがどういうところを見てお問い合わせいただくかということを常に聞いて、その中でコンテンツをブラッシュアップしていくことです。
【編集部】
ウェブ集客は広告も大事ですが、記事書きも大事です。私たちの会社でも、お客さんの役に立つ記事をこつこつ書くことが大切ですとお伝えしているのですが、記事書きは渡邊先生がやっていらっしゃるのですか?
【渡邊氏】
僕と、うちのメンバーがやっています。本当はお客さんの立場でいい記事をバンバン書くことができればいいのですが、僕の一番の意味付けは、自分自身がアウトプットすることによって知識の習得ができるということでした。メンバーにも、まずは未経験の子にアウトプットによって知識を習得してほしいと伝えています。
【編集部】
やはりウェブの記事は忙しくて後回しになってしまうことも多いと思いますが、そのあたりはどのように工夫されていますか?
【渡邊氏】
僕らの知識は商品そのものなので、その仕入れをしない限りなにか付加価値を付けて売ることはできないと思います。セミナーで身につける知識もありますが、究極的にはアウトプットして人の役に立った知識こそが、本当の自分の身についた知識だと僕は意味付けしています。だからこそ自分自身もメンバーも、アウトプットをしなければならないと思っています。
【編集部】
クオリティ・ワンさんのウェブページはすごく迫力があってスパイスが効いています。これは渡邊さんが考えられたのですか?
【渡邊氏】
そうです。「税務調査110番」という税務調査のページや自分のコーポレートのホームぺージも全部企画するのですが、コーポレートのホームページは基本的に既存のお客さんに満足してもらえるというコンセプトでやっています。例えばCMでいうと、BMWは売り込むというよりも既存のお客さんが喜ぶようなエンジン音や走りをイメージして作っています。それをヒントにして、うちのお客さんが見て「クオリティ・ワンを選んでよかった」「こんな面白い税理士法人に頼んでいるんだよ」というように、既存のお客さんが経営者に言うときに口コミになってほしいと思って作ったのがこのコーポレートサイトです。初めて見る人は多分好き嫌いがはっきりすると思います。
【編集部】
記事の中にURLを貼っておくので、ぜひご覧ください。(http://q-one.jp/)すごく渡邊さん感が出ていますもんね。渡邊先生はベンチプレスの世界大会にも出場されていて、それと合わさって渡邊さん感が出ていると思います。確かに話題性があって、すごくいいと思っています。
【渡邊氏】
ありがとうございます。

納税義務者の信頼に応える

【編集部】 
渡邊先生の今後の目標を聞かせていただいてもいいですか。
【渡邊氏】
一つはとことん上質(クオリティ)を追求していきたい。あと、やはり日本に貢献していくために税理士の役割はなにかということを考えると、一つは納税額を増やしていくことだと思います。クオリティ・ワンのお客さんが納税している金額は約10億円です。これを5年後に50億円にしたいと思っています。
つまり、クオリティ・ワンのお客さんがクオリティカンパニーになって、ありえないくらい価値を社会に貢献して、自分たちも豊かになっているということです。このクオリティカンパニーというのをたくさん輩出していきたいと思っています。
【編集部】
最後に2つお聞きしたいことがあります。一つは、今AIが発達してきていますが、AIに淘汰される可能性が高いとされる士業について、税理士業界はどのように変化するとお考えですか?
【渡邊氏】
AIの時代に残るのは「ホスピタリティ・クリエイティビティ・マネージメント」と言われています。そして税理士法人の業務には、製造業的な要素とサービス業的な要素があると思います。製造業的な要素というのは、AIに代わってくると思います。
しかし、サービス業的な部分、税理士法にもある、「納税義務者の信頼に応える」という部分はまさにサービス業の部分はAIではできない部分だと思います。例えば、税務調査の時にお客さんの不安感を軽減する「ホスピタリティ」。数字をベースに経営者に多くの気付きをあたえる「クリエイティビティ」。私たちは、その関わりでいかにお客さんを豊かにして、クオリティカンパニーになっていくかを一心に考えてサービスを提供し、信頼を得ています。まさに税理士の在り方が問われていくんだなと思います。
【編集部】
やはりAIは作ることはできますが、人にしかできないこともあります。税理士という垣根を越えて、経営者の方々にクオリティの高いサービスをどう提供するのかというところで勝負しなければいけませんね。最後に、この記事をご覧になっている読者の方に学びや成長につながるメッセージをお願いします。
【渡邊氏】
税理士など士業になったということは、ご自身が税理士試験合格ためにものすごく努力されたと思うし、国から使命をいただいているわけです。だからこそ、在り方を土台にしてやり方を求めていったところに、専門家としての成功があるんだろうなと思います。士業の方は社会的影響力があると思いますので、やり方と在り方で発信してもらって、自分だけではなく周りの人にも物心の豊かさやクオリティを分け与えた先に自分の豊かさがあるのではないかと思います。やり方と在り方をともに追求していける同志だと嬉しいなと思っています。
【編集部】
ありがとうございます。本日は税理士法人クオリティ・ワン代表の渡邊勝也先生にお越しいただきました。本日はありがとうございました。
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