司法書士による、コンサルティング業務の付加価値をつけて差別化する方法

インタビュー

商業登記というニッチな分野で新たなポジションを築いている松本光平氏に、顧客ゼロからスタートした司法書士事務所について、将来の展望を含めお話を伺いました。

選ばれるためには特徴を作る

【編集部】

こんにちは。本日はゆう司法書士事務所代表の松本光平先生にお越しいただきました。松本先生はベンチャー企業に特化した法務コンサルをされており、前職の司法書士事務所では累計1,500件ほどの登記もこなしていらっしゃいました。

 

【松本氏】
前職は飲食業や総務経理など、司法書士とは全然関係ない業界にいました。司法書士になったきっかけは、総務経理をやっていたベンチャー企業がある日突然倒産してしまい、職を失ったことから始まります。その中で自分がやりたかったことやできることを考えた時に、司法書士として会社の法務支援ができるというのはいいなと思い、司法書士試験を受験しました。
【編集部】
なぜ会社の支援をやろうと思ったのですか?
【松本氏】
就職していた企業が基本的に中小企業で、社長さんとの距離が近く、その仕事をよく見ることができました。社長の方がどういうところで苦労するかということを身近で見ることができたんです。社長は社長にしかできないことが多くて、「社長は孤独だ」という言葉を聞くことがありますが本当にそうで、自分にできることがあればいいなと思いました。小さい会社だったからこそ幅広い経験ができ、中小企業の状況を理解しつつ、今後法務の専門知識も追加することによって、社長さんの手伝いができると考えました。
【編集部】
今司法書士の先生は世の中にたくさんいらっしゃいますが、選ばれる先生になるために意識的にやっていらっしゃることにはどのようなことがありますか?
【松本氏】
司法書士の大体は不動産登記の分野を主にやっている先生が多いです。そうなると不動産登記の分野には競合が多いですし、あとから参入するのも難しい。将来的な展望としても、登記の件数自体が減ってきていること、あっても大手の事務所に集約していることがあって、小さい事務所が入っていくというのはなかなか難しい状況です。なので司法書士の業務の中でも特化する必要があるというのがまず一つです。その中でも商業登記はニッチな分野であるので、まずはそこにターゲットを絞りました。ただ商業登記だと単価が低く、そのために敬遠されているという事情もあるのですが、特化すれば登記だけではなく会社法や企業法務にも詳しくなってきますし、聞かれることもあります。そういった付加価値を付けていくことによって、よりコンサルティングのようなかたちでその報酬ももらえますし、選んでいただける特徴を持つことができるという思いで選びました。

【編集部】
登記と一緒にコンサルティングもやっているということですね。2017年の8月に開業されましたが、開業前スタートダッシュを切るために準備していたことはありますか?
【松本氏】
開業前には資格の登録や事務所の準備、営業ツールの準備などやることがたくさんあります。開業すぐにすべてが揃っている状態を理想としていましたので、それを目指して当時は準備をしました。ただやはり一部間に合わないところがありました。開業してすぐにホームページを公開できるよう考えてはいましたが、結果的に遅れてしまったのでそこは少し反省点でした。また、ネットワークづくりは早くからやるに越したことはありません。私もやろうと思ってはいましたが、あまり早いうちからやると事務所の場所も決まっていないし電話番号もないし、名前も決まっていないので、難しかったです。本当は6カ月前くらいからできればいいと思っていましたが実際できたのは1カ月前とか2カ月前とかになってしまったので、そこも反省点というか、うまくいかなかったところです。
【編集部】
ネットワークづくりとは、具体的にどのようなネットワークを広げていらっしゃるのですか?
【松本氏】
商業登記のお仕事は会社様から直接いただくということは少なく、税理士さんや弁護士さんなど他士業の先生からの紹介が主になりますので、基本的にはそのような先生方とのネットワークづくりを重視しております。
【編集部】
先ほどのお話の中にもありましたが、税理士の先生とのネットワークを開拓していらっしゃると。そうすると税理士の先生からお仕事が来る機会が多いのですね。
【松本氏】
そうですね。やはり会社様の顧客を一番持っているのは税理士先生かなと思います。
【編集部】
税理士の先生はやはり本契約とかを持っていらっしゃることが多いのですか?そういったところから開拓をしていこうということですかね。税理士の先生と距離を近づくために意識していることはありますか?
【松本氏】
当然最初の頃は仕事がないので、仕事が欲しいという気持ちが出てしまいがちですが、仕事がいただけるのは信頼ができてからで、信頼ができたからこそ仕事が紹介してもらえるというところがあるので、まずは信頼していただく、仲良くなるということを第一の目標としております。
【編集部】
今現在仲良くなるためにやっていることはなにかありますか?
【松本氏】
自分の顔写真を入れて業務の特徴などを書いた名刺を作り、少しでも印象付けるようにしています。あとはお会いした後にそのときお話した話題などを書いたはがきを送るようにしています。そのおかげでメールの返答をいただいたりすることもあります。
【編集部】
さきほどおっしゃっていたのですが、ウェブを最初ご自身で作られたそうですが、9カ月ぐらいかかったそうですね。後でプロに頼んだら3か月ぐらいで済んだというお話でしたが、もう一度やるとしたらプロに頼みますか?
【松本氏】
期間もありますが出来栄えも違いますので、頼みます。ホームページは見た目の印象でプロが作ったものか素人が作ったものか見分けがついてしまうので、プロに作ってもらった方が信頼感につながるのではないかと思います。

顧客ゼロからのスタート

【編集部】
前までの事務所がこの場所の近くということなのですが、前の事務所で3年半勤められていて、お客様を少し引き継がせていただいたということもあるのですか?
【松本氏】
引き継ぎがあればとてもありがたいのですが、なかなかそういうわけにも行きませんでした。事務所さんに迷惑をかけますし、業務の特性としてメインで直接担当を持つということはなかったので、お客様を引き継ぐことはありませんでした。ゼロから開拓する覚悟でやめましたし、実際そうなりました。
【編集部】
顧客ゼロの状態から松本先生は開拓されているのですね。今具体的に営業の開拓はどのようにされていますか?
【松本氏】
ホームページを作ってはいますが、それで直接集客というのは難しいので、ホームページはお客様が一人でも来ればいいかなというところです。やはりリアルの営業がメインになりますので、他の士業の先生とネタを作るということをまず重視し、士業の先生方が集まる交流会に出席したりしています。あとは社長様が集まる場所ということで、金融機関がやっている経営者の会というものに入らせていただきました。
【編集部】
そういったコミュニティに参加したりされているということですね。

業務を絞ったことで司法書士事務所経営がうまくいった

【編集部】
今まで準備されてきたことの中で、何がうまくいっていらっしゃいますか?
【松本氏】
やはり業務を絞ったことが良かったと感じています。当初は業務を絞ることによって営業ターゲットも絞られてしまうので不安があったのですが、今は一部見えてきたことがあります。先日ホームページから「ストックオプションを作りたい発行したい」という問い合わせが来ましたが、これは業務を絞っていたからこそ来た問い合わせだと思います。多分その会社さんも司法書士自体は付き合いがあるはずです。ただ、あえて来ていただいたということは、私のホームページを見て、専門性を見て選んでくださったということなので、業務を絞ってよかったと感じています。
【編集部】
ちなみに今ここまでで、何が一番大変でしたか?
【松本氏】
顧客がゼロというところからのスタートで、営業をどうやっていくか、売り上げをどう上げていくかに苦労しています。
【編集部】
営業の開拓ということですね。士業の先生は営業が苦手な方が多いというイメージを持っていますが、松本さんはどう思われますか?
【松本氏】
苦手ということもありますし、営業された会社さんもどう思うのかなと考えると営業がしづらいですね。司法書士の先生が営業に来て仕事を出すかといわれると、なかなかそういうことにはならないと思います。そういった環境面でも、本人の営業スキルという面でも、営業は難しいんだと思います。
【編集部】
今後の課題ということですね。業界にはたくさん司法書士の先生がいらっしゃいますが、開業したての松本先生の視点だと、業界はどのように見えるのでしょうか。
【松本氏】
不動産登記の分野でこれからずっとやっていくのは厳しい、というのが共通の認識ではあると思います。既存の先生も登記の件数が減っていることは感じていて、売り上げが少し減ることもあると思います。どういった分野を広げていくかというところに課題があります。既存の先生方は相続登記の分野を広げようとしていますが、いずれにしても不動産登記の分野です。自分としては新しい業界を作る、ではないですが、開拓の余地がある商業登記の分野において、付加価値を付けて認知をされれば広がっていくのではないかと思っています。

司法書士開業後の失敗

【編集部】
松本先生が開業して失敗してしまったことはありますか?
【松本氏】
開業にあたって創業融資の手続きをしているのですが、その中で必要書類に「開業届」というものがあります。本来は控えを作っておけばよかったのに、その開業届を税務署に出し切ってしまいました。開業届を閲覧してコピーしてもらうことに1カ月くらいかかり、手続きのために融資の手続きが止まっているという状態です。
【編集部】
もし今の知識や経験を持ったまま2カ月前や準備期間に戻ったとしたら、どんな風に開業準備をされると思いますか?
【松本氏】
ネットワークづくりをやっておくということも大事だと思いますが、即効性があったと思うのは、ホームページをもっと早く公開してブログの記事を厚くしておくことです。実際公開して1カ月ですが、記事を増やしていくと順位が上がることを実感しているので、最初の段階からやって記事のストックを作っておけば違うんだろうなと思いました。
【編集部】
コラム記事のようなものを書くということですね。うちの代表の伊藤もよく皆さんにお伝えすることですが、開業する前にたくさん記事を書いておくと、公開したと同時にバン!と出せます。最初創業メンバーは4人いたのですが、一人1週間当たり100記事、4人で400記事書いていました。2カ月で4000ページくらい書いていて、キーワードも取れてきたので、そういう記事を書いていけるといいですよ。今後の松本先生の目標を教えていただけますか?
【松本氏】
直近では事務所の安定化ですが、長期的な視点ではベンチャー支援として、ベンチャー企業が事業の売却などをできるように法務手続きの支援をしていますので、将来的には自分でベンチャーファンドを作れたら面白いと考えています。資金を集めて、面白いものに対して自分が投資をできたらいいと思っています。それが一番の支援になるかと思うので。
【編集部】
なかなかそういったことをしている士業の先生はいらっしゃいませんよね。その中で「投資もやってくれる士業事務所」をやれば違ったポジショニングが取れそうです。最後に、この記事をご覧になっている読者の方に学びや成長につながるメッセージをいただけますか?
【松本氏】
開業は勇気がいることで、本当に開業していいのだろうかと悩みます。私も開業を決意するまで1年くらい悩みました。ただ、開業してみると世界が変わります。勤めているときは人間関係はあまり広がっていかなくて、いつものメンバーたちとやっていくということが多いです。学ぶにしても自発的に学んでいかないと学ぶことはできませんが、開業すると学ばざるを得ない環境になります。これによって自分の成長も速くなりますし、出会う人たちが広がり変わってくることで新しいことが出来るようになります。新しいことをやりたくなりますね。頑張っている方々に接することによって影響を受け、自分も頑張ろうという気持ちになれるので、開業して良かったと思っています。なので、思い切って開業してみましょうということです。
【編集部】
本日はゆう司法書士事務所代表の松本光平先生にお越しいただきました。ありがとうございました。
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