社労士が説く、売ることに躊躇をなくすことが売れる最大の理由

インタビュー

精神科クリニックにて精神保健福祉士として依存症治療に携わり、当時の経験を活かしながら、講師業そして社労士として活躍されている秋葉原社会保険労務士事務所代表、脊尾大雅氏にお話を伺いました。

社労士を目指したきっかけ

【編集部】
脊尾さんのプロフィールを教えていただけますか?
【脊尾氏】
20代の時に精神科のクリニックで勤務をしておりまして、アルコールやギャンブルの依存症治療に携わっていました。30歳のときにEAPの機関に転職し、39歳のときに秋葉原社会保険労務士事務所を開業して今2期目です。
【編集部】
社労士を目指されたきっかけはなんでしょうか。
【脊尾氏】
精神科勤務時の話からつながってくるのですが、精神科をはじめとし、医療機関は調子が悪くなるから通うものです。しかし、病気によっては病院に来た時点でもう遅いということもあるので、病気にならないためにはどうするかということを考えなければなりません。そこで予防的なことをやるためにEAPの機関に移り、実際に予防的なことをいろいろやりました。今ももっとできることはあるのだろうと思います。一方で、人との関わりや組織への関わりの中で、もっと根本的な、会社の在り方や枠組み、制度に直接的に着手をするという面では、カウンセラーやコンサルタントとしてでは限界があると感じました。効果がないわけではなく、部分的にはとてもよいと思いますが、私がやりたいことはトータルでどうなっていくかということだったので、社労士として就業規則や助成金などのツールを使って会社の外枠をどう整えていくかということも考えていく必要があると思いました。
【編集部】
脊尾さんは講師業もされていると伺いましたが、どういった取り組みをしていらっしゃいますか?
【脊尾氏】
主に公開研修と企業研修の二つに分けて考えています。公開研修は、不特定多数の方がいらっしゃって一般的なことを理解してもらうものです。具体的には商工会議所や職能団体、例えば○○協会だとかの依頼が多いですね。そこでやることは企業で生かしやすいエッセンスを抽出していくので、人によっては過不足があります。もうちょっと深く聞きたいという人もいれば、わからないとか難しすぎるといったこともあります。

公開研修はあくまで多くの人に広めていく、という目的です。企業研修は先ほど言ったように「外枠をどう作るか」というためにやっていくのですが、企業研修は価値が高いと思っています。理由は、企業の現状を反映した内容にできるということと、個別の対応よりは会社全体のメッセージも含めた目線合わせがしやすいことです。「うちの会社ではこの事案をこう考える」とか、そういうことができるので、企業研修は比較的行っていった方がいいと思います。その二つ(公開研修と企業研修)で、同じ講師と言っても立ち位置が違うという感じです。

【編集部】
企業研修や公開研修をやろうと思ってもすぐにできるものではないと思いますが、どのようにして企業を見つけていったのですか?
【脊尾氏】
先ほど申し上げた公開研修が一つです。商工会議所や地域の集まりに加盟したりし、そこの方とつながって一回二回研修させていただき、参加者の方が「うちでやってほしい」と言ってくださる流れがあります。あとは同業の方や異業種の方がやっている勉強会などに行って同じようにやっていくことによって、うちのお客さんになったりすることもあります。
【編集部】
先ほど商工会議所でも、ということをおっしゃっていましたが、それももともとつながりがあったのですか?
【脊尾氏】
商工会議所の会員になった後に縁があって研修担当の方と会ったので、「こういうのをやりたいのですが」とプレゼンしました。それに関しては依頼があったというよりも、依頼がもらえるようにこちらから売っていったということです。
【編集部】
営業をかけたということですね。同じような研修やコンテンツを売っている社労士の先生は多いと思いますが、脊尾さんがそれだけ講師業をできているのはなぜでしょうか。
【脊尾氏】
私の得意分野はメンタルヘルスやハラスメント、コミュニケーションなど労使トラブルに関することがメインですが、その分野だけの話で行くと、対策はある程度出尽くした感じがします。しかしもう一個踏み込んでいって、現状をどう変えていくかということについて(私は)、頭で勉強したことよりも、体感的に自分が経験したことを学術的に裏付けていって、深めていっているというのが実際のところです。

前職のEAP時代にやったカウンセリングの件数は1万件単位なので、そこで得たことを実際に言われている理論やエビデンスにつなげて裏付けていって、「だからこうなる、こうしていく」という道筋を作っていけます。引き出し勝負のところはあります。そこまでやるとお客様の満足度が高い気がしますし、個別のお客さんから依頼も来やすいです。

【編集部】
先ほどインタビューの前にお話していた際にも、そこまでやるなら日本で一番になれるだろうとおっしゃっていましたが、最初からそのポジションを目指していらっしゃいましたか?
【脊尾氏】
やってきたことの質、幅を考えると、確実に前職のEAP機関は日本の中でトップなので、そこでやってきたことが弱いとは思えません。10年やっているという時点ですごくアドバンテージがあると思いますし、社労士になってトレーニングを受けたということも、専門性をより磨いたというのが近いのかもしれません。もともといい武器は持っていて、それを磨き上げたというのが、今話しながら少し思ったことです。

同じ志の仲間とつながることが大事

【編集部】
音声や文字だと伝わりにくい部分もあるのですが、脊尾さんはすごくエネルギッシュです。そういったバイタリティーやパワーはどこから来るのですか?
【脊尾氏】
揺るぎないものが一つありまして、「同じ志の仲間とつながる」ということです。誰と付き合うかということが士業の世界では勝負な気がします。同じようなことを言う人でも、本心や、その人の人柄を含めて「どう感じているか」を感覚的に共有できたときに、自分の中に持っている物が揺るぎなくなったり、アイディアがたくさん出てきます。耳あたりがいいことを言ってくれる人とばかり付き合うのではなく、自分にとって価値のある人とどう付き合えるかが大事です。うまく具体的には出てきませんが、そこは大きいと思います。
【編集部】
同じような志を持つ人に出会うことは難しいのではないかと思いますが、どこでそのような方を探すのでしょうか。
【脊尾氏】
一つは、自分がいいなと思った勉強会や研修会に継続して出るということです。自分がそこがいいと思って出ているのであれば、同じように継続して出ている人とも、すべてとは言わずとも共有できるものがあるのではないでしょうか。そこで出会った人からつながった人もまた同じような感覚を持っているので、数珠つなぎのように人脈が広がります。いいと思った勉強会で人と出会うというのは大事です。

売るという行為に抵抗をなくすことが売れる原因

【編集部】
講師業とともに社労士のお仕事に取り組まれていらっしゃいますが、どういった成果を得られていますか?
【脊尾氏】
積極的な営業はもちろんしますが、一期目のお客様はほぼ100%紹介です。開業するまでに築いた、人とのつながりからもらった仕事がとても多かったです。あとは、初めて会う方に対してもそうなのですが、「脊尾さんと言えば○○」という印象付けをしました。そうすることによってお客さんがつながりやすい。実際にどういうところでつながりが生まれてくるかと言うと、同業の方々にも得意分野が様々ある中で、私の得意分野と同僚や先輩の不得意分野が合い、私がスポットで関わる場合です。実は、社労士の方から「ここをちょっとやってもらえないか」という相談が多いです。助言レベルで終わることもあれば、実際にお金が発生することもあります。
【編集部】
先ほどのお話の中で営業を積極的にされていたとおっしゃっていましたが、士業の先生には営業が苦手な方も多いという印象を持っています。脊尾さんは営業で心掛けていることはありますか?
【脊尾氏】
自分が展開する商品に圧倒的な自信を持つということは大切です。商品に自信を持てなければ、売ることに肯定的な気持ちを持てません。私の能力開発を受けている先生も言うことなので受け売りの部分もありますが、商品に対する自信、職業に対する自信、会社に対する自信、自分に対する自信を持つことです。

自分や自分の周りにあること全般に対する自信を持ち、その中でも特に商品に対する自信を持っていけるのであれば、少なくとも売るという行為に躊躇することはありません。
押し売りなのではないか、相手に悪いのではないかと思うのであれば、そこまでの気持ちを保障しなければならないと思う、心の在り方が阻害要因な気がします。

もっと率直に言うと、私はいいと思って売ったけれどお客さんからは「いらない、興味がない」という反応があったとしても、お客さんが現状そう思うだけであって、商品に対してダメ出しをされたわけでも、私自身が否定されたわけでもありません。おなかがいっぱいの人に「ごはんはどうですか?」と言っても「いらない」と言われるのと同じで、タイミングの問題です。

いいと思っているのなら、その商品を売るのは普通の行為です。私は飛び込み営業はしませんが、会う人に商品を提案することに遠慮はありません。

【編集部】
脊尾さんが今後目指す先、目標はなんでしょうか。
【脊尾氏】
事務所の理念が「世のため人のためになることをする」というもので、事務所の使命である「共生共働の社会の創造」という言葉とともに名刺にも書いてあります。私たちの行動の軸は、行動が世の中の人のためになり、誰かのためになることです。具体的に言うと、「三方よし」の仕組みを目指しています。私たちの事務所がいい、お客さんがいい、そして私たちとお客さんの良好な関係から得られるものは、社会にとってもいいということです。その三つに合致するものをひたすら売っています。何を目指すかというと、「共に生きて共に働く社会を作る」ということです。事務所を秋葉原にしたのは、従業員にとっても通いやすい、お客さんが来やすい、そして今後フランスを含めて世界に会社を作っていく上で世の中全体が一緒になれる街、という観点からです。秋葉原は雑多な街で、出る改札口によって色がまったく異なります。そういう街こそ許容幅がとても広いので、いいと思いました。障害があろうがなかろうが、病気であろうが、全員が成功する社会を作ることができたらいいと思っています。
【編集部】
素晴らしいですね。このインタビューでは、最後に読者の方の成長や学びにつながる一言をいただいているのですが、お願いできますか?
【脊尾氏】
「やると決めたら続ける」ということです。まず決めたらやる、そして続ける。それが大事だと思います。
【編集部】
なぜ「続けること」が大事だと思っていらっしゃるのですか?
【脊尾氏】
私は開業するときに、いきなりその分野で「トップになろう、突き抜けていこう」という戦略だったのでそこに注力しましたが、今の時点でトップかというと、全員と会ったわけではないためわかりません。しかし自分がトップだと思ってやり続けなければ、もしどこかで「違うかも」と思ってやめてしまったら、名実ともにトップを取るという戦略すらもなくなってしまいます。自分が社労士としてこうやろうと決めたのであれば、満足のいくまで、もっと言えば結果に満足がいくまで、やり続けて決着をつけていかなければ、成功はないのではないでしょうか。諦めたら成功はありませんからね。最初にある一個二個のつまずきは、失敗ではなく経験だと思ってやればいいと思います。怪我を乗り越えて成長すればいいです。
【編集部】
死ぬこと以外はかすり傷のようなものですからね。
【脊尾氏】
そうですね。借金があろうと、どんなことがあろうと、何とかなるのではないかと思います。
【編集部】
ありがとうございます。本日は秋葉原社会保険労務士事務所代表、脊尾大雅さんにお越しいただきました。
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