業界の偉い士業との絆を若いうちに作るべき理由

インタビュー

全国でも数少ない「不動産鑑定士兼公認会計士・税理士」の冨田建氏に、士業業界で太い絆を作るための極意を伺いました。

業界の偉い人との絆を若いうちに作るべき理由とは

【編集部】
開業前後の黎明期は人の縁の開拓が難しいと思いますが、最初どのようなところから人の縁を開拓しましたか?
【冨田】
不動産鑑定事務所に勤務していた2007年、たまたま入った地元の近くの宅建業者さんのところに、大学の不動産会のテナントがありました。「これはなに?」と聞くと、慶應大学出身の人の不動産の集まりだと言われ、自分も慶應出身だと言うと参加させてもらえることになりました。
そこでその宅建業者とも仲良くなり、今でも公私ともに付き合いがあります。
あの時の一言がなければこの縁はないし、のちに不動産三田会(慶應大学の不動産会)経由で慶應出身の公認会計士の先輩も紹介してもらうことができ、公認会計士三田会や税理士三田会、公認会計士清風会(公認会計士協会の中で46年続く勉強会、後に冨田は43代目の代表になった)等にも絆が広がっていきました。

【編集部】
人の縁には恵まれたということですね。

【冨田】
それが一番大きいかなと思います。

【編集部】
もしもう一度開業当初に戻ったとして、今までの知識や経験があったとしたら、どのような準備をされますか?
【冨田】
うちは色々な理由があって開業準備がろくにできない状況で始めてしまったのですが、もし準備ができたとしたら、独立前からもっと視野を広げていたと思います。人との絆や、仕事以外の視野を広げなければ奥行きは出ません。

【編集部】
例えば仕事以外の視野というと、どのようなものがありますか?

【冨田】
一つは、公認会計士東京会の会長も務められた慶應高校の大先輩に7年くらい前に伺ったことなのですが、「士業は立法府に守られてその仕事がある。法律で独占が担保されているからこそ仕事がある。ということは、立法府と常に緊密なつながりを持っていないといけない。」ということです。私ももっともだと思ったので、ご縁に恵まれた事もあり、支持している勢力の議員さんにも可愛がって頂いています。
もう一つ大事なことは、士業の協会の幹部への敬意です。例えば、この業界のこの制度は、制度としては今使っているかもしれないけれど、どういった背景があってどのように構築された制度かということを知ると知らないでは大分違ってきます。
あとは、難しい判断も、知っているか知らないかでより深みのある判断ができるのではないでしょうか。公認会計士だったら公認会計士協会の幹部、税理士だったから税理士会の幹部、不動産鑑定士なら不動産鑑定士協会の幹部と若いうちから絆を作った方が絶対にいい。

【編集部】
絆を作るためにはどんな努力が必要ですか?
【冨田】
例えば公認会計士の場合だったら初めは縁が全くなくとも公認会計士協会の総会後の懇親会とか新年会とか、慶應出身なら公認会計士三田会とかに行って、そこに協会の幹部たちがいるので、最初はとにかく「よろしくお願いします」と挨拶します。そういう方々は業界全体を考えているので、そういう若手は基本的に歓迎です。少なくとも、自分から勝手に敷居が高いとは思わない方がいいです。

【編集部】
話しかけづらいと思うのではなく、どんどん積極的に挨拶して話しかけに行く方が良いのですね。

【冨田】
もしそれができないのであれば、幹部に絆を持っている少し上の先輩に紹介してもらう。

【編集部】
絆を持った先輩はどのように見分けるのでしょうか。

【冨田】
やはりそこに昔からいる人でしょうね。

【編集部】
それは強いですね。一人で悩んでいてもわからないことはわかりませんから。そういった絆をしっかりと持っておくことによって、解決が早まったり、分野によりますがその人に助けてもらうこともできますね。

【冨田】
ちょっと困ったときにお願いすることもできるし、なによりも絆があることによって普段から安心感もあります。もう一つはあまりみんな気づかないところなのですが、絆を持っておけば、心のどこかで不正をしにくくなると思います。少なくとも間違ったことはやってはいけないという圧のようなものが強くなる。普段から、あの人たちは俺を知っているし世話になってるからそのような皆さんに迷惑をかけらないな、という風になります。そういった意味でも絆の構築は大事だと思います。

【編集部】
礼儀正しくなるとか、謙虚でいられるようになるといった、日本の作法のようなところでしょうか。

【冨田】
それもそうですし、これは社会的見地からやらないほうがいいということを、幹部になるほどの優れた先輩の顔を知っていることでやりにくくなる。健全な発展を目指すために、普段顔を出しておくということがとても大事だと思います。ただ、実際にそれができていない人が多いのも事実です。そこにも一つの差別化があるのではないでしょうか。

【編集部】
できていない方というのは、なぜできていないのでしょうか。
【冨田】
価値に気付いていないということもあるだろうし、敷居が高い、絆がないからやりにくい、ということもあると思います。確かにわからないでもないです。 

本当のお客さんはその士業の実力、信用、人間性でつくもの

【編集部】
冨田先生は開業にあたり準備はなかったとおっしゃいましたが、準備がなかったことによる失敗談があればお聞きしたいです。
【冨田】
最初だけきつかったですね。体制ができていませんでしたし、人のつながりは少しはありましたが、最初の年の売り上げはきつかったです。今となっては最初の下積みだったと思います。【編集部】
下積み時代に最も学んだことは何ですか?
【冨田】
人の絆などはいろいろと作っていきましたが、やってみなければわからなかったとはいえ、意味不明な商品を売りつけようとする輩やこちらが興味もない怪しい雰囲気の会合に引き入れようとしたりする輩といった問題のある繋がりもありました。勿論、それらとは縁を切りましたがそれは結果論なのでしょうがないとして、やはりこちらを騙してお金を盗ろうとしたり士業の信用を悪用しようとしたりする者もいるので、それに引っかからないように気を付けてほしいと思います。とにかく、「自分が必要としていないのにあちらから声をかけてきてお金を出してください」というのはまずロクな事はありません。勿論、うちは引っかかりませんでしたが。

勝利への道は独占市場を作ること

【編集部】 

冨田先生は、開業1年目は苦しかったそうですが、そのあとは順調に売り上げを上げてこられました。その秘訣は何でしょうか。

【冨田氏】
無用な甘さは悪ということです。
私はプロ野球が好きなのでよくこの例えを使うのですが、自分がエースの立場で投げている。例えば周りに同じように不動産を評価する人がいた。その人たちは自分よりも劣るが、性格は良かった。それで「お前は性格いいから、俺のエースの座を譲るよ」と言う人はいますか?

競争の世界だからマウンドは譲らない。その精神は絶対に必要です。第一、お客様に対して最高のものを提供しない事にもつながるので失礼です。

当然、エースの座に俺がいる。他の誰にも譲らない。少なくとも、私は不動産鑑定士としては最多勝をとれるエースと思っていますので、いつもその意識は持っています。
但し、例えば公示価格の鑑定評価のように他の不動産鑑定士と一緒に仕事をすることもあります。そこでは最大限敬意を払わなければなりません。バランスが大事です。

【編集部】
これから公認会計士の先生が開業しました、となっても、冨田先生とはキャリアの年数が違います。長いキャリアの先輩に勝つためにはどのような努力や取り組みが必要だと思われますか?

【冨田氏】
独占市場を作ることです。私の場合は「会計・税務のわかる不動産鑑定士」というポジションですが、普通の不動産鑑定士は会計はわかりません。それと同じように、その新しい公認会計士はその人なりの独壇場を作ればよいのではないのでしょうか?

【編集部】
ではそれは、資格を持っているかどうかということになるのでしょうか?

【冨田氏】
独壇場を作るのに何も別の資格を持っている必要はないと思います。
公認会計士なら会計のフィールドの中で「ここは俺」という分野を作る事でしょうね。

資格を取れる能力と、実際に案件を取れる能力は全く別です。極端な話、弁護士兼公認会計士で案件を取れない人がいて、もう少し簡単な資格で案件をたくさん取れる人がいてもおかしくない。資格の難易度と案件を取る能力は別物。難しい資格に合格した人こそそこを認め、色々な工夫をしつつ、変にお高く止まらないことです。

【編集部】
お高く止まってしまうと、人との絆を作ることにも尻込みしてしまったりもしますね。

【冨田氏】
そういうところもありますね。専門知識とか公正性のような大前提は別として、ひとつだけ、士業に大切なものを挙げるとしたら何だと思いますか?

【編集部】
僕は人の縁を大切にすることだと思います。今までお世話になった方やこれからなる方など、ひとつひとつのご縁を大切にする。

【冨田氏】
それもあるでしょうね。私は、端的に言うと、好奇心だと思っています。独立するということ自体も一つのチャレンジというか好奇心だし、そのあとどんな展開になるかは全くわかりません。その時に、自分のできる範囲になりますが、人の縁にしても業務内容にしても、「この仕事ちょっと面白そう」とか「この人たちちょっと面白そう」という良い意味での面白さがあることによって、業務がマンネリ化しない。マンネリ化の原因は好奇心がないことです。

【編集部】
同じことを繰り返していたら衰退ですよね。

【冨田氏】
衰退だし、もったいない。せっかく難しい資格を取って士業の仕事に就いたのに、嫌いなものやつまらないものを仕事をするのはもったいない。その状況を排するのに一番大切なのは好奇心です。

【編集部】
最後に、読者の方に学びや成長につながるメッセージをいただけたらと思います。

【冨田氏】
一つは正義を忘れないこと。いくらお金が稼げても、社会のためにならないことはいつか害悪をもたらします。当事者だけのマイナスではなく、みんなのマイナスになります。なので、私のポリシーとして、「ご依頼者のためにならない鑑定評価書は書かない」というのがあります。
もう一つは先ほど言った好奇心。この二つを持ち合わせていれば、全員成功するとは限らないけれど、自分がエースと思えるようなもの、つまり自分が鑑定するのが一番いいんだと思えるだけのものが持てる。それがなければ独立すべきでないと思います。

【編集部】
本日は、冨田建不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所代表、冨田会計・不動産鑑定株式会社代表冨田建さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

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