事務所の目的によって行動が変わる(KAWARIMON)

インタビュー
2017年12月3日に士業向けイベント”KAWARIMON(カワリモン)”を開催しました。「KAWARIMON 爆速成長を実現してきた士業のここだけの話」の中で「開業1-6年で業界平均5倍以上の売上を突破した変わり者士業たち」と題しまして、パネルディスカッションを行いました。登壇したパネリストは、瀧井総合法律事務所所長・瀧井喜博氏、ゆき法務事務所代表司法書士兼家樹株式会社代表取締役・田代隆浩氏、行政書士法人エベレスト代表社員兼株式会社エベレストコンサルティング代表取締役・野村篤司氏、スタートパートナーズ総合会計事務所所長・古殿哲士氏です。進行は、株式会社ウェイビー代表取締役の伊藤健太です。

事務所の目的によって行動が変わるはず

【伊藤】
みなさんこんにちは。このパネルディスカッションは午後の一発目ということで、とても僕の仲の良い先生たちをお呼びしています。弁護士さん、司法書士、行政書士、税理士さんに来ていただいておりますが、開業から大体1先ほど確認したところ古殿さんが2年目に入られており、一番長い方が田代さんで6年目です。田代さんは6年目と言っても34歳で、僕と野村さんが31歳、瀧井さんが34歳で田代さんと同い年、古殿さんが35歳。本当に若く、2年目から6年目の、年齢も31から35歳までの先生方ですが、各地域や各業界で新しい取り組みを行っていたり、既存の士業事務所としてのキャッシュフローとしても、とんでもないアウトプットを出したりしている先生方です。今日はまずこの70分のパネルディスカッションで、各先生たちがどのような人なのか、どんな考えを持っているのか、何をしているのかということを皆さんにお伝えできたらいいと思っています。では、最初に自己紹介をしていただきたいので、やりたい方からお願いします。
 
【瀧井】
みなさんこんにちは。瀧井と申します。私は大阪で弁護士をしており、この11月でちょうど丸2年経ちました。もともとブラック企業におりまして、働くことがとても嫌いでした。そんな中初めて入った法律事務所がすごく楽しかったのですが、おじいちゃんの事務所で、ずっと続けることはできませんでした。自分としてはずっと楽しい職場を作りたいという思いから早めに独立をし、弁護士が現状3名おり、今月四人目の弁護士が入ってきてくれます。事務員さんが4名います。とりあえず楽しく仕事をしてくれ、ということで今ここまで来ています。よろしくお願いいたします。
 
【田代】
司法書士の田代と申します。東京の立川市という、田舎の方で5年くらい前に司法書士として独立しました。もともといた事務所が解散になってしまい、苦し紛れに一人で始めた事務所です。最初の方はどうにかお金を回すために、債務整理や不動産登記、商業登記をやっていましたが、6年目を迎えた今年に、パンチのあることをやろうと思い、家系図の作成会社を始めました。作ったのと同時に、クラウドファンディングサイトで支援の募集を行い、結果的に3か月で1000万くらい得られました。サイトの中ではスタートアップという部門の中で1番を取ることができました。今年は一つ成果を出すことができたのでここに立たせていただいているのかなと思います。家系図の作成会社はこれから確実にうまくいく自信があります。その中で、次に何をしようかなと考えています。今は立川市でやっていますが、来週から銀座に移転し、東京の真ん中で勝負しようと思っています。以上です。 
 
【伊藤】
ありがとうございます。あとでまた田代さんに話を聴かせていただきたいのですが、士業事務所でクラウドファンディングを使ってお金を集めるところはほとんど皆無です。通常のクラウドファンディングでも1000万円級の案件というものはほとんどない中で、司法書士さんがクラウドファンディングを使って1000万円集めたことにとても意味があると思っています。「新しい飲食店の作り方」という話を僕はよくするのですが、昔のように自己資金を貯め、銀行から借金をして飲食店を建てるなどということはあり得ません。クラウドファンディングで2000万円集めて何を売っているのか。1万円の会員権を2000人の人に売っています。会員権を売っているので、2000万円と言っても借金ゼロで1店舗建てることが出来ます。これは画期的です。なおかつ2000人の見込みのお客さんがついてきています。これが最近の一番進んだ飲食店の建て方であって、こういう世の中の進歩と士業の掛け合わせは、今まで全くありませんでした。資金調達を手伝っている先生は税理士さんを筆頭にたくさんいますが、クラウドファンディングの提案なんてなにもやっていません。でもこれでは顧客の利益に損失を生んでしまっています。だから、田代さんのように新しいテクノロジーをユーザーとして自分で使いに行くことを、進んでやってほしいなと思っています。またあとで話を聴かせていただきたいと思っています。では、次の方お願いします。
 
【古殿】
みなさんこんにちは。スタートパートナーズ綜合会計事務所というところで税理士をやっております、古殿と申します。私は瀧井さんと同じく、大阪で事務所をやらせていただいています。東京の方のお客様が増えておりまして、現状は出張ベースでやらせていただいていますが、これからどうしようかと考えています。私は開業して1年3か月で、お客様はちょうど100件くらいです。結構良いスタートダッシュがきれています。実は伊藤さんとは開業前からいろいろお話をさせていただいており、集客には幸い困っていない状況です。ただ、どこの士業さんもそうだと思いますが、人の問題が当然ありまして、一朝一夕には解決しません。今は6人でやっていますが、今月一人入って、来月も税理士が一人入る予定です。一人入っても、その人がずっと勤めてはくれない前提で一人辞めたら二人採る、というスタンスで今のところやっています。これくらいの規模の事務所だと、できる人が一人辞めると大騒ぎです。自分の組織があたかもその人の組織かのように動かされる感覚になってしまいます。それがとても嫌で、お金はかかるのですが一人辞めたら二人採って、二人辞めたら四人採る、というスタイルでやっています。
 
【野村】
株式会社エベレストコンサルティング兼、行政書士法人エベレスト代表社員の野村篤司と申します。よろしくお願いいたします。株式会社と行政書士法人と2つあるのですが、メインは株式会社です。エベレストグループという、士業法人、士業を中心としたコンサルティンググループの運営をしております。またこの後のディスカッションでお話できたらなと思うのですが、うちにはベトナム人と中国人のスタッフがいます。優良職業紹介事業で募集株を発行して資金調達をし、新たに参入をしたり、相続AIを開発したりもしています。AIで相続相談を開発しようと、日本IBMの社員に株式会社に出仕してもらうなど、少し変わったことをしています。まさに今日のテーマです。以上。 
 
【伊藤】
先ほどパネラーの方々に、ちゃんとバリューを出すように僕からお願いしています。今日は僕の方から問いを持っているわけではないので、今までやってきて、どのように士業をとらえているのか、事務所経営において大切にしていることはなにか、ここまでの軌跡などをお話しいただいてもよろしいでしょうか。それぞれ素晴らしいアウトプットを出されています。瀧井さんで言えば、働きやすい事務所といったところですね。士業事務所は基本的にそんな観点を持っていませんので、離職が多かったり採用を繰り返していたりします。それがポジティブなものなら良いのですが、人がすぐ辞めてしまって補填の意図で、ネガティブに採用を繰り返しているという事務所はたくさんあると思います。「なかなか人が辞めない事務所」というのは瀧井さんのポリシーでもあり、文化にもなっていると思うのですが、それがなぜできているのかなどの話をしていただいてもよろしいでしょうか。 
 
【瀧井】
みなさん士業なので、よくできる方々の集まりで、なんでも自分でやってしまうと思います。幸か不幸か私はできることとできないことの差が激しいんです。例えば、僕はファイル整理にめちゃくちゃストレスを感じますし、できない。なので「助けてもらっている」という気持ちがすごくあります。だから、仕事が終わって帰るとき、多分みんな「お疲れ様です」という感じだと思いますが、うちは自然に「ありがとう」と言っています。また、僕らは基本的に労働集約になりがちですよね。仕事がばーっと入って、お金は入る。仕事をこなさなければならないので、しんどいじゃないですか。人を雇っている方だと、下の方たちが本当に忙しくなってしまいます。自分は楽しい職場を作りたいので、仕事を取りすぎることはやりたいことと真逆です。そこでどうするか。長期的には人を採らないといけないですが、短期的に考えたらみなさん何をしますか、というところで、僕は広告とかを止めました。お金は払ってしまっているので、広告費をもう取らなくしました。売上は下がるけれども本当にいい職場を作りたかったので、赤字は出ましたがそれでいいと思っていました。本当に人を定着させたいと思っているのなら、簡単な話、しんどくないように仕事量を調節し、やりたいことを聞いてあげるようにするといいです。みなさん、下の人に「どういう仕事をしたいの?」と聞いていますか?僕は聞きます。やはり経営者の役割って、組織に足りないものを取ってくることだと思うので、求める仕事がないのなら取ってくればいい。それができないのなら経営者としての資格がない、とまでは言わなくても、取れるように努力すべきだと思います。それくらい従業員のことを考えるべきだし、従業員は最大のお客さんだと思っているので、そういう意識を持っていけたらみんな楽しくやっていけるのではないかと、そのように行動しています。 
 
【伊藤】
瀧井さんとの付き合いは開業前からなので、今日一番まじめだなあと思いました。初めてそんな話を聞いて驚いています。素晴らしいなと。すごく大切だなと思ったのが、何を事務所の目的とするかだと思っています。事務所のトップラインの売上を伸ばすことよりも、ES(従業員満足度Employee Satisfaction)を上げることの優先度が高いと判断し、一度新規の営業を止めました、というのが先ほどのお話で広告をやめたということです。目的がどこにあるかによってその行動をとるかどうかが決まってくると思います。瀧井さんはどんな事務所を作りたいと思っていらっしゃいますか? 
 
【瀧井】
僕がいなくても勝手にみんなが生きたいように生きることができる事務所です。極論法律事務所でなくてもいいし、起業したいと言うのなら起業してくれていい。やはりみんなエリートなんですね。僕も含めみなさん。 
 
【伊藤】
瀧井先生はエリートじゃないと思いますよ(笑)。 
 
【瀧井】
僕、一応経歴はエリートなんで(笑)。エリートの人って、みんな与えられた物差しで生きるんです。いい大学行って、いい資格を取って。それって「生きている」って言えないと思うんです。僕は若かりし頃に一度殺されそうになって、その時に「生かされるんじゃなくて自分の意思で生きてやろう」と思ったので、それを身近な人にも味わってほしい。やりたいことができる環境を作るのが経営者の務めだと思っていますので、自発的にやりたいことをできる環境が作れれば僕はそれでいいです。

競合他社は士業じゃない、サービス業だ!

【伊藤】
どなたでも良いのですが、みなさんの事務所はメンバーの数も5人から10人ほどいらっしゃると思いますが、創業時今のようになるという想像はありましたか?
 
【野村】
私のところはグループ全体で19人いるのですが、行政書士登録をした3年半前、開業前から、数字を売っているわけではありませんが日本一の売上にしたいと思っていました。うちの名前は「エベレスト」というのですが、「顧客満足の最高峰を目指す」ということをひとつ行動指針にし、「最高峰」の代名詞として「エベレスト」とつけています。顧客満足を追求していくと、そこに組織化や拠点化ということが当然ありましたので、弊社の場合は最初から大規模事務所を考えていました。よく「大規模化を狙っている」などと言われますが、全く逆です。理念が先にある、ということです。 
 
【伊藤】
ご存知の通り、僕は開業してから最初7カ月くらい売上がありませんでした。売上をもらえるという感覚も全くなく、横浜の近くの田舎にある家の近くで文房具屋さんをやっています、というような人をずっと馬鹿にしてきました。簡単に言うと。「やっていて面白いのかな」とか。でも僕はそれすらできない。売上をもらうという感覚が全くなかったのですが、みなさんは開業前からとても順調で、売上を上げるイメージはあったのかなと思うのですが…。 
 
【田代】
私は全くありませんでした。とりあえず飯を食わなきゃという気持ちで、自分の生活のためにやっていました。最初はそうだったのですが、人を雇いだすとその人のために「何かしてあげたいな」という気持ちになる。そうすると会社を大きくして、お金を稼げるようになればもっと給料も払えるし、従業員の家族を支えることに貢献できるという思いが生まれてきます。それから、利益を出してどんどん大きくしていこうという拡大志向に変わりましたね。 
 
【伊藤】
素敵ですよね。最初はイメージがなかったわけですが、何がきっかけで自分一人のキャッシュフローが回ってき始めたのかということと、なぜ人を雇おうと思ったのかという2点質問させていただきたいです。単純に業務量が多くなったから人を雇っていって、雇っていく中で今のような発想になったのでしょうか。 
 
【田代】
人を増やしてから考えるというのが一番いいと思いますが、回らなくなったら増やすという形で、常にずっと人が足りない状態でいます。 
 
【伊藤】
最初あまり売上を上げるイメージが持てなかったわけですが、それはどうやって突破しましたか? 
 
【田代】
私の場合、ある程度大きく始めるということをモットーにやってきました。士業の場合初めはお客さんをちょこちょこ取って、足りなくなって人を増やして、いつのまにか5年10年経っていました、というパターンが多いかと思います。大きく始めることで差別化ができるというか、そこでまず突き抜けることができます。大きく始めるのはいいことだという意識でいますし、私は広告代理店にいましたので、そのつてを使って少し大きめに広告を出しました。 
 
【伊藤】
他の方、大きく始めるってどうですか?古殿さん、身体が大きいから大きく始めているんじゃないかと思いますが(笑)。 
 
【古殿】
伊藤さんと出会ったのが、税理士試験の最後の科目に通っていない時で、あの時にもう独立は決めていました。おそらくそのときは食べていくためという感じでした。いろいろ準備をしていたら開業1カ月で10件くらい取れて、そのときに「これはいけるな」と思ってすぐに人を雇用しました。その後出てきたのが人との問題です。スタートアップ期はどこでもそうですが人って辞めます。いろいろ試行錯誤しましたが、最終的にマネジメントをやってくれる人を採りました。彼は実務はあまりやっていませんが、私と細かいことまで常に共有しています。そういう人を入れてからはできる人の定着率が上がり、良かったのかなと思います。そんな感じで、自分にとって嫌なことを1つずつつぶしていこうとしていて、今は、規模を大きくすればほとんどのことは解決するんじゃないのと思うようになりました。全てのことについて選ばれるのではなくて選べるようになりたい。 
 
【伊藤】
古殿さんと僕も、開業する前から存じ上げておりますが、普通の先生よりも圧倒的に可動域が広い方です。可動域とは行動のエリアなどのことですが、開業前からモチベーションがものすごく高く、貪欲さを感じていました。Facebookのやり取りやお話をお聴きする機会がたくさんあり、質問もたくさん投げかけられる。動いているから質問が出るんですね。本当に現実を進めていく人なんだな、と見ていましたが、開業前自信がなさそうでしたよね。 
 
【古殿】
初めて独立するので経験がなく、机上の話は頭に入っていても実際やってみるとどうかという不安はありましたが、やってみると意外とスーッといきました。 
 
【伊藤】
本当にそうですよね。まだ1年3か月くらいですが、顧問先100社いるというのはとんでもない数字で、古殿さんご本人も圧倒的に変わりましたよね。ご本人はわからないかもしれませんが、話す内容も以前とは全然違います。最初はどうやってお客さんを増やしていくかという問いでしたが、今はもうお客さんを増やすのは大丈夫だから、ということで、事務所作りなどのお話に変わってきていますよね。 
 
【古殿】
もう今は完璧に「人」ですね。 
 
【伊藤】
野村さん、どうですか?今日は開業前の方から開業したてての方、長くやっていらっしゃる方、さまざまな方がいらっしゃいます。野村さんは、この3年4年で20名くらい、顧問で100社くらい付くってすごいことだと思いますが、何を大切にしてその結果になったのでしょうか。 
 
【野村】

規模的な面では全然小さいと思っています。私は競合他社が士業とは思っていません。士業でいうと5人は大規模なのですが、僕はまだサービス業者として19人しかいないので、超零細です。そこは若干違うところです。実は僕はリクルートというものをしたことがなくて、せいぜいハローワークです。ハローワークだけですね。ではどうやって19人集まってきたかと言うと、もちろん大学時代からの知り合いもいますが、基本的には士業交流会で会って、理念やビジョンを話して「一緒にやろう」ということですね。なのでコストはあまりかかっていません。

具体的な数字で自分の立ち位置を把握せよ

【伊藤】
本当に素晴らしいなと思いました。後で具体的な話と抽象度の高い話と分けて聞きたいのですが、ベンチマークをどこに置くかですべて決定すると思っています。僕も5年前くらいに資格者向けにアメブロを書いていたことがありましたが、「ベンチマークはディ
ズニーランド」とか書いていました。なぜかというと、ディズニーランドはリピート率が90%以上あるのですが、士業事務所でリピート率が90%なんてありえないので、そういう事務所を作ることが目的だと書いていました。お客さんにとって圧倒的な価値を提供することによって、「素晴らしいな」と、お客さんがお客さんを連れてきてくれて、事務所だって繁栄しますよね。だから(繁栄しないと言うことは)そもそもやっていることに価値がないのではないかと。新規のお客さんを増やせば事務所は大きくなるに決まっていますが、僕はいい事務所のKPIやKGI、目標設定としては、どれだけ既存のお客さんがお客さんを連れてきてくれるか、というところが一番大切なのではないかと思っています。それについてどうですか?自分では何の数字が大事だと思いますか? 
 
【田代】
今年作った家系図の作成会社は、来年、日本一家系図を作る会社にするということを、目標というより予定としています。あとは家系図を起点としたビジネス展開を行おうと思っています。法律知識をもっと一般の方に提供したいという思いが士業としてあるので、それをどう相続などに結び付けていけるか、考えていきたいです。「家系図と言えばあの会社だよね、あの会社は司法書士がやっているらしいよ」というところを目指しています。 
 
【伊藤】
途中でどこに着目しているのかというのはものすごく大切です。気づかないかもしれませんが、素晴らしいところは「目標じゃなくて予定」というところです。予定と目標は全く異なります。予定ということは、もう実施計画まで落とし込まれているということです。「こうだったらいいな」というレベル感の目標設定ではないんだということです。「これをやる」というのは決定していて、「やらない」とか「できない」という話ではありません。実現するための計画まできちんと引けています、という状態を、このくらいの先生たちは行動基準として持っています。それに気づいてほしいです。先ほどの野村さんの話でもそうでしたね。士業の中では3年4年で19人に行ったらかなり大きい方ですが、そんなことはどうでもいい。ベンチマークはそこではないからです。サービス業としてお客さんにどれだけいいサービスを提供するのかという点で言うと、全然小さいなと。どこに目標を置くかによって事務所の取る行動は変わってくるので、そこは間違えないでほしいと思います。瀧井さん、どうですか? 
 
【瀧井】
僕は一応、来年は売上を取ろうと思っています。人をどんどん増やす予定なので、その人たちを雇うためのお金が現実的に必要になってきます。来年は売上6000~8000という計画です。僕はまだまだ田代さんほど落とし込めてはいませんが…。 
 
【伊藤】
それぞれにお聞きしたいのですが、2-6年の間で、一番事務所の営業やマーケティング活動で大切にされていたことはなんですか?

【古殿】
大手税理士法人の代表がおっしゃっていましたが、「一般企業が海で戦っているとすると士業は湖で戦っている」と。結構その言葉は合っていると思います。士業の競争は一般企業のそれと比べたらまだまだ緩くて、動けば食えないことはないなと1年目でわかったので…。 
 
【伊藤】
経営者が「頑張ったらなんとかなる」とよく本で記述していますが、「頑張る」の度合いが、あの人たちは血を吐くくらい頑張っている。でも本の文脈では読者は誰もわからず、それを「なんとなく今の頑張りでいいんだ」と思ってしまって、自分のベストエフォートで良しとしてしまう。資本主義社会では通用しません。僕は古殿さんの「動き方」を知っているので、古殿さんの言う「動く」もそれと同じようなものだと思います。具体的にどのくらい「動く」ということなのか、教えていただいていいですか?年間100件も顧問を取れる人は日本でほとんどいないと思いますが、どんな動きをしたらできるのでしょうか。 
 
【古殿】
うちは成約率というものを出していて、大体50%です。ということは、200件ぐらいは会っていて、それは全部私が会っているので…。どうなんでしょうか。2日に一回は誰かに会っているということですね。 
 
【伊藤】
見込みの経営者の方にということですよね。意外と少ないですね。50%の決定率がとんでもなく高いのでしょうね。 
 
【古殿】
50%が高いのか低いのかはわかりませんが…。 
 
【伊藤
いや、高いです。見込みの人がとんでもなく精査された見込みの人なのか、古殿さんの圧倒的なバリューがあってそうなっているかですね。 
 
【古殿】
最初はとりあえずなりふりかまわずいろんな人に会っていました。 
 
【伊藤
どうやって会っていましたか? 
 
【古殿】
お誘いがあればですね。例えば僕らの業界だと保険屋さんと結構付き合いがある方が多いので、うちも10人以上保険屋さんから紹介をいただいています。必ずお返しはするようにしていて、個人で入っている3つの保険はすべて別の方からです。そうすると関係性が長く続いたり、くれる人はすごく紹介をくれます。一人保険の方で、10件以上紹介をくださっている方もいます。もちろん投げても返ってこないことはありますが、そんな感じでずっとやっていれば、動物的な勘のようなものもついてくると思うので、営業はそんな感じです。 
 
【伊藤
初期のころ、営業にどれくらい時間を割いていましたか? 
 
【古殿】
名刺の数を数えましたが、1年目で1800枚くらいありました。 
 
【伊藤
素晴らしい。他の三方もそういうのが欲しいです。わかりやすいので。1800枚に意味があるのではなく、100枚くらいしか集まっていない人が「なんで結果が出ないんだろう」と考えても仕方ないということです。そこの問題ではありません。僕は、とりあえず大量構造の中でいろんなPDCAが回っていって、結果とか質とか、先ほどの成約率などが高まっていくと思っています。そのタイムコードなくして、士業の人は冷静に判断する。それでは絶対に結論を導けません。1800枚が多い多くないはいいのですが、みなさんの1年間と比べたら絶対に多いはずです。それが結果の差になっています。これは単年度の差ではなく、一生変わらないレバレッジの差です。今100件顧問がいるということは、2年目に入ったら100社の顧問を持ってスタートしているので、この100社にとって完璧なオペレーションで満足できるサービスをやっていた場合、経営者が一人税理士さんを紹介することは簡単なことなので、一人が一人に紹介するだけで翌年は200社になります。これがずっと続いていったらもう絶対追いつけません。だから極めて当たり前のことを当たり前にやるだけです。1800、1年目にやったかどうかというのはとんでもない差です。大丈夫ですか?取り返せるんです、いつでも。瀧井さんは何を大切にしてきましたか? 
 
【瀧井】
大分やり方は変わってきました。最初はなんのつながりもなかったので、独立前から行けるところには顔を出していました。週に6.5回くらいは飲んでいました。2週間に一回家に帰る、みたいな感じです。他は家にも帰っていませんでした。で、一応、得意なフィールドで勝負したほうがいいと思います。飲みに行けということではなくて、僕はたまたま飲むのが好きだったので、行っていたというだけです。自分が得意だったり好きだったりすることも、やってみないとわからないので、広告やface to faceの付き合いとかも、とりあえず数をこなしてやってみて、それから自分の向いていることを判断されたらいいのかなと思います。もう一点伝えたいと思ったのは、みなさんどれだけ現状を数字で把握されていますか、というところです。私は初めから独立志向だったので、弁護士になった時から自分の依頼いただいた仕事をめちゃくちゃ分析していました。どういうルートで、どういうジャンルで、どういう単価で、ということを全部エクセルに書いていました。いまだにぜんぶやっています。そうしたらどういうマーケティング戦略を取るべきかということが、素人ながら見えてきました。独立前の段階で。みなさんもどういうマーケティング戦略を取ればいいかと悩む以前に、きちんと現状を把握するということをした方がいいと思います。自分の場合はそれがうまくスタートダッシュにつながったんだろうなと思っています。 
 
【伊藤
さすがです。僕も見せてもらったことがありますが、このお客さんがどのようなルートで来られたのかなど、記録されていましたよね。僕は弁護士さんで一番仲がいいのがたっきー(瀧井さん)なんですが、ものすごくライトで、誘ったら確実にすぐ来てくれるので、いつもお誘いします。本当にすごいと思っています。では、お二方…。

【野村】
私も名刺の数ですが、1800までは行きませんが1000は行きました。私は3年やってきましたが、営業の前に組織化を念頭に置いていました。お金は信用の対価です。信用がないとお金は入ってきません。今回のイベントでも最初の半年で400万借り、翌年で1400万売り上げたという話があったと思います。あれは実際受託で言うと2000万なのですが、その最初の半年間やってきたのは法人営業です。法人営業するときに、個人事務所を開業したてで経験がないと言ってもなかなか信用は得られません。だから最初に法人化を考え、パンフレットも立派なものを作り、いきなり駅の近くに事務所を開設しました。そういったことを3年間注力してやってきました。ここから次のフェーズに入っていきます。最近は売上1兆超えているところと提携し、葬儀社さんとも提携しました。それは信用があるからかなと思います。すぐにはできないので、最初の3年間でそれをやっていた感じです。 
 
【伊藤
最初は法人のマーケットを取りに行くんだということで、信頼がとても大事だから信頼を作っていかなければならなかったのですね。一つは事務所の規模や世界観のアウトプット、クリエイティブなパンフレットを作らなければならないということで、半年間も投資をして400万赤字になったものの、そこから投資したものが回収され始めているということですね。先ほどの田代さんの話と同じですが、士業事務所は器用な人で、やり方に合えば、どの経路から入っても売り上げは出てくると思います。スモールに始めることがいいという風潮ですが、そんなことはありません。田代さんも最初に公告代理店時代の発想でお金をかけてやっていました。古殿さんにしても開業前からものすごく準備されていました。すべてをお金換算することはできませんが、時間を含めてコストと考えるのであれば、最初にかなり時間やお金の投資をされているということです。では最後に田代さん、お願いします。 
 
【田代】
名刺の数の話で気づいたのですが、この間持っている名刺を全部スキャンしたら、全部合わせて1000ちょっとしかありませんでした。これはきちんと営業活動している士業さんと比べて非常に少ない枚数です。というのは、私は司法書士の業務に対してあまり自信がありませんでした。司法書士の仕事は誰がやっても一緒だという思いがあって、一生懸命営業しても、お客さんに役立つわけではないだろうというまじめすぎる人でした。自信を持って「うちに仕事をください」とあまり言えなかったんですね。だからあまりそういう営業はやっていませんでした。広告代理店にいましたので、広告の出し方やマーケットリサーチを一生懸命やりました。好きな言葉で、本田宗一郎も「俺は好きなことしかやらない」というものがあるのですが、私はそれを地で行っていて、広告や集客は得意ですが司法書士業務は得意な人にやってもらえればいいやという気持ちです。だから最初は広告やマーケティングに集中していました。今は家系図などで差別化できているので、自信を持って営業できています。

これからの士業は「士業の枠を超えろ」

【伊藤
今日よく出ている話として、役割分担があります。瀧井さんにしても古殿さんにしてもそうですね。やらなければならないことは間違いなくたくさんあります。キャッシュを作らないといけないし、事務所の未来を作らないといけないし、その骨組みや組織図を作らなければなりません。士業の先生に限らず、マルチにいろんなことを並行してできる人はほとんどいません。だから大事になってくるのは、周りの力をどれだけ借りることができるかです。瀧井さんも「自分は器用じゃなかったからよかった」とおっしゃっていましたが、器用な人であればあるほど器用貧乏になっていきます。「自分でやった方がいい」と。全然スケールが変わらない。個人事業であればそれでいいですが。売上とはなんぞやという話をすると、新しい価値を作るためのガソリンです。ガソリンなくして新しい事務所や事業はできません。だから結果として大きくなるだけであって、お客さんに対していいものを提供したいんだとやっていけば売上はついてくるに決まっています。年々増えるに決まっています。関係先が増えていくので、当たり前のことをやって関係先といい関係であれば、お客さんを紹介してくれるので増えていきます。年々やっているのにお客さんが増えていかないというのは、当たり前のことができていないということです。新規紹介なんていらないくらいです。既存のお客さんのレバレッジだけでとんでもなく大きくなっていくのがいい事務所なので、どれだけ役割分担と、自分の得意なことにフォーカスすることができるかが大事です。意外と「なんでこの人はこれをやっているんだろう」という方はたくさんいらっしゃいます。今だと役割分担はアウトソーシングで解決できます。ネット上のオンラインサービスもたくさん出ているのでそういうものに任せていくだったり、うまく切り分けしていくといいんじゃないかと思います。あと25分くらいなので2つほどお伺いしたいと思っています。一つが、今の士業の業界をどのようにとらえていて、ここから何をしていくことが士業事務所にとって大切なのかということです。 
 
【瀧井】
野村さんがおっしゃっていたことがその通りだなと思いました。士業という枠を作ってしまうことが僕はそもそも嫌で、伊藤さんの問いに対して反論のようになってしまうのですが、士業としてということを考えない方がいいと思います。私には今師匠のような人がいるのですが、その人は政治家とかからも仕事が来ます。なんでですかと聞くと、「それは俺しかできない事をやるからやで」「たっきーしかできない事をやる、これが本当の仕事やで」と言われる。そこから自分にしかできない仕事ってなんだろうなと考えるようになりました。士業であることを売りにしたら士業であればだれでもできるので、なんの強みにもなりません。だからみんな自分のバックグラウンドや得意分野を掘り下げて、本当に自分にしかできないことを見つけるということが今後のポイントではないかと考えています。 
 
【伊藤
なるほど。今日は答弁っぽいですね(笑い)。どうしたんですか?では次、田代さん。 
 
【田代】
士業がやることは法律で決まっています。その中でばかり考えているのはダメだと思います。まずは一人の人間として、自分の技術を活かしてどのように人の役に立てるのかということから考えるべきだと思っています。その中の一つが資格だと思います。その上で資格ともう一つ別の事業をやるというのは簡単な差別化ポイントだと思います。僕が知っているファイナンシャルプランナーに、カメラマンをやっている方がいるのですが、それで営業が回りだしています。 
 
【伊藤
T氏ですか? 
 
【田代】
そうです。全く同じだと思います。一つだけやっていると周りと同じになってしまうのですが、もう一個やればオンリーワンになれます。すごく簡単だと思うので、実践したほうがいいんじゃないかと思っています。 
 
【伊藤
本当にそう思います。ではお二人、いいですか? 
 
【野村】
士業の在り方や今後という話で必ず出てくるのが、AIの台頭ですよね。あれもよく士業の方と話していると、仕事が奪われる、奪われないという観点から話す方が非常に多い。正直僕は早く奪ってほしい。単純業務をAIに任せてもっと価値の高いことをやっていけばいいだけなので、AIは敵ではありません。うちでも相続AIというのを開発しており、AIには学習型と非学習型というのがありますが、とにかくビックデータが欲しいです。今やりたいのは相続相談のAI化です。そのために、今ウェイビーさんと一緒にやらせていただいているのですが、伊藤&Aサイトを作って無料で利用してもらって、回答を増やしてデータを蓄積するというのを来年、描いています。AIに奪われる、奪われないのレベルではなく、奪われるのは決まっているのだから、活用していくというのが今後分かれ道になると思います。 
 
【古殿】
うちは普通の会計事務所で、今流行っていますが業種特化などは全然していませんし、特にハイテクということもありません。クラウドソフトを絶対使おうということもありません。正直AIって怖いな、というところもありますが、税理士に限って言えば、毎月経営者の方とお会いして、グリップが一番握れる職業だと思っています。そこでしっかりグリップを握って、いいサービスをしていれば、AIが来て税理士の仕事がなくなっても、経営者の方と全く切れるということはありません。日々いいサービスをして、紹介をいただいて、ということをきちんとやっていれば、AIが来て何か変わるかな、というところが正直なところです。昔から技術革新は起きていますが、「この人からサービスを受けたい」という気持ちは変わっていないのではないかと。なので、税理士じゃなくなっても、ケーキを売るのでも、クリーニング店でも、グリップを握ることのできる能力があればいいだけだと思います。うちは敢えて、技術革新、AIというのは意識していません。ただ今後事務所の規模や成長によって、そういうこともきちんと考えていかなければいけないと思っています。それより強い組織を作ることが今は何よりも大事ですね。

士業におけるコミュニケーション能力とは

【伊藤
商売は当たり前のことを当たり前にやっていくだけなので、信頼をいかに作っていくかということだけです。AIは手段であって、どうやって活用していくかという視点で見るべきですし、AIを入れる入れないはどちらでもいいですが、とにかく大切なのは、変わらない商売の原則をみなさんが体得して実践できるかということだと思っています。古殿さんのお話の中で「経営者をグリップする」というものがありましたが、なにか工夫されていることはありますか?
 
【古殿】
毎月会っていたら、大体仲良くなりませんか…? 
 
【伊藤
ならないと思います。「仲良くなる」の度合いですね。みなさん仲良くはなるのですが、グリップは握り切れていない士業の先生はたくさんいると思います。 
 
【古殿】
昨日の夜1時くらいにお客さんから「これからキャバクラ行かないか」と電話がかかってきたのですが、1時でも電話できるくらいの間柄にはなっているわけですね。そのとき私は東京にいたので「今東京なので今日は無理っすww」と返したのですが、そういう関係になっているお客さんがうちには多いです。うちは特に低価格競争はしていないですし、月3万円以上でないと基本的にはお客さんを取っていません。じゃあどうしているかというと、いいサービスをして、お客さんから常に信頼できる人であれば問題ないと思っています。 
 
【伊藤
問題ないと思います。どうやってそういう経営者から呼ばれるような人になるのかな、ということですね。 
 
【古殿】
一言でいえば「コミュニケーション能力」ではないでしょうか。「営業」、集客についてはほとんどテクニックだと思っていますが、唯一属人的なのが「コミュニケーション能力」です。ここで人の差が出ます。これがない人が低価格競争をしていると個人的には思っています。税理士顧問料月1万、安くていいですね、という人がいますが、うちはそこで勝負をせずに、人間と人間の信頼関係でどこの事務所にも負けないと思っています。そういうタイプのキャラというか、「飲みに行きませんか」というお客さんが大半ですし、仲良くなろうというスタンスでやっています。 
 
【伊藤
どうやったらコミュニケーション能力は上がるのですか? 
 
【古殿】
どうなんですかね。そういう人じゃないとなかなか厳しいような気もします。 
 
【伊藤
生まれ持った才能だと。 
 
【古殿】
一般企業の営業の方ってそんな感じでやっている方多くないですか。多分士業の業界が真面目一辺倒というイメージがあって、逆にちょっと緩いと「前の先生と違う」とか言われるんですよ。うまく表現できませんが…。 
 
【伊藤
誰かコミュニケーション能力を上げるための方法をうまく言える人いませんか? 
 
【瀧井】
士業一般のイメージって、「偉そう」とか「上から目線」といったものだと思います。単純にその逆をいけばいいと思います。 
 
【伊藤
本当にそうだと思います。テクノロジーは関係なく、お客さんをグリップできるかということに尽きます。それってお客さんに「この先生は面白いな」と思ってもらうことが大事です。面白いというのはただ面白い話ができるという意味ではなくて、仕事をするときはきちんとできるとか、全部含めてそう思われることがとても大切だと思っています。これも僕は場数が増えていかなければうまくできないと思います。みなさんそれぞれ得意なことがありますので、コミュニケーションが苦手な人はコミュニケーションで戦う必要はありません。高いサービスとして提供するというのでも構わないと思っていますので、なにが自分の得意なことなのかは間違えてはいけないですね。では、残りの時間でみなさんの方から聞きたいことがあれば質問していただければと思います。
 

採用は事務所の未来づくり  

質疑応答

参加者A
今日はありがとうございました。僕は野村先生に、相続のAIについてもう少し詳しく教えていただきたいです。
 
【野村】
私は超文系で、プログラムのことは一切わかりません。ただIBMがワトソンというのを開発して、11月1日からライト版が無料で使えるようになったんです。最初は1000万2000万かけてIBMに開発をお願いしようと思っていましたが、あの分野は発展が早く、すぐに陳腐化してしまいます。だから今は、うちに情報学部卒の従業員がいるので、その人にIBMの勉強会に参加させて、HTMLやJavaといったプログラミングの基礎から勉強するというのを来年から始めます。一年あれば大体わかるので、AIのプラットフォームをいじれるかなと思います。すぐできるものではありませんが、3年後必ず変わってくると思うので、長い話をしています。ただ「相続AI」で商標申請はしてあります。ベストライセンスさんの「創薬AI」という、似ているものがあったのですが、うちのも通るのではないかなと弁理士さんは言っていました。日本IBMの社員も入れて、確実に動き出しています。具体的なことはまだわかりません。 
 
【伊藤
どういう人を採用していくかというのは事務所の出来上がりは全く変わってきます。筋肉質になるのか、柔軟な筋肉か、意味のない筋肉か、脂肪か…。だから、どういうメンバーを採用するかは、どういう事務所を目指すのかという出口から逆算しなければそうなっていきません。今までやった社員教育なども全部破綻していきます。なので、どういう事務所を作っていくのかという未来を想像しながら今に引き戻していって、選択をしていってほしいと思います。他の方どうぞ。
 
参加者B
瀧井先生にお伺いします。スタッフの方をとても大事にしているというお話でしたが、業務量の調節以外でなにかされている取り組みがありましたら教えてください。 
 
【瀧井】
二つほどわかりやすいものがあります。一つは「趣味はなに」と聞くんですね。ある子が「ダーツです」と言ったので、ダーツの機会を入れました。 
 
【伊藤
それはお金があるからできたんですよ。お金で解決したってことですよ! 
 
【瀧井】
いや、たまたまもらえたんですよ。ちょうどいいタイミングで「ダーツいる?」と。いいタイミングで。あとは、みんな夜のごはん時まで仕事をしていることが多いので、「米炊こうか」と言って、炊飯器を置いて。 
 
【伊藤
それもお金があるからできるんですよ。 
 
【瀧井】
炊飯器は僕の中古です(笑い)。楽しく和気あいあいと。あとは、風通しの良さです。あまり僕が偉そうにすると意見は上がってこないので、いじられるまではいかなくても、小馬鹿にされています。そうすると相談も上がってくるので。 
 
【伊藤
では他の方。
 
参加者C
従業員が辞めないことがいいこととされていますが、私はそうではないと思っています。日本一働きやすい事務所でなければいけないと思っていますし、その人にも適性があります。明らかに法律事務所よりベンチャー企業の社長として今すぐ独立したほうがいいという人もいます。旅立った方がいい人材に対しては、瀧井さんはどう対応されるのでしょうか。 
 
【瀧井】
それは旅立ってほしいですし、いい関係を築きたいです。逆に合わずにやりたいことを用意してあげられないことが僕は嫌なので、やりたいことを聞いて、法律事務所以外がいいなら、一応一枚噛みたいですが、それでいいと思います。 
 
【伊藤
そうですよね。僕も田代さんと全く同意見で、長く働いてもらう必要はないと思います。日本人は一つのことを長く続けるのがいいことのようになっていますが、それってどうなのかなという思いもあります。適材適所というか、役割分担もありますし、事務所もどんどん脱皮していって、求められるスキルやモチベーションは変わってきます。みんなが成長していってそこにアジャストしてくれるといいですが、適材でない人がいたり、事務所側の問題があったりもするので、そういう場合、瀧井さんは、その人のことを考えてなにか用意してあげたい、ということですね。優しいですね。他の方どうぞ。
 
参加者D
先ほど田代さんが、「士業の枠組みを外す」というお話をしていらっしゃいましたが、家系図のお仕事と司法書士の業務の両方をされていることによって、なにか強みはあるのでしょうか。 
 
【田代】
具体的な家系図作成会社のメリットは、葬儀屋さんと仕事ができることです。あと、僕たちはBtoBで家系図を販売しています。今まではリスティングやSEOだけで家系図を販売している業者しかいなかったのですが、私はBtoBでやっています。やってみると石材店(墓石を作る会社)からすごい問い合わせがきていて、そういう会社は家系図がわかると墓石を新しく作れるので、ぜひ扱わせてほしいと言われました。石材店さんはある程度僕たちのサービスを利用して事業を発展させることができるんですね。そういったたくさんの会社とお付き合いができることで、司法書士の業務にもメリットがあります。司法書士として会ったのでは、「司法書士ってどんな仕事をされていますか」といった話になってしまうのですが、まず関係を作ってから、司法書士という側面を出すことができる。そういった部分からこれはやって良かったなと思っています。
 
参加者D】 
入り口としては司法書士ではなくて会社を持っていた方が、ビジネスとして広がりやすいということですか? 
 
【田代】
はい。私の経験上圧倒的に、「司法書士です。」と言うよりも、「家系図とかを作る会社を経営しています。」と言った方が、話を聞いてもらえます。あとから「司法書士なんです。」と言うのが僕の営業パターンです。それで差別化、ブランディングをしていますね。 
 
【伊藤
司法書士や行政書士は手段の一つなので、そこを自己紹介で名乗ってしまうと相当ヒットしません。相手の期待値もありますので、「この人は法律家できっと堅いんだろうな。」「(仕事の)スピードが遅いんだろうな。」「融通利かないんだろうな。」など、変なバイ
アスがかかった状態でスタートしなければなりません。できることも先方には大体イメージが付いていますので、これを壊すのも大変です。だから、入り口の自己紹介や相手にどう認識してもらうのかということはとても大事です。そこの出口が一個しかないというのはつらいですよね。違うことを何かやった方がいいと田代さんは一貫しておっしゃっていますが、間口が広い人であればあるほど、関係企業は増えていきます。関係企業が増えたあとに、一件ずつ信頼関係を築いたり、グリップしたりできれば、そこから仕事につながっていくと思います。あと2,3問行けますが、どうでしょうか。
 
参加者E
僕は独立して1年、まだ一人でやっていますが、今後もう少し拡大し人を雇っていこうと考え始めました。みなさんどのタイミングで組織として大きくすることを考えていたのかお伺いしたいです。 
 
【瀧井】
抽象的な部分で行くと、最初からある程度の規模感でということは考えていたので、いい人がいればという感覚でした。具体的に採るタイミングは、まずは「いい人がいたら」です。本当に初期のころに、たまたま。その出会いのタイミングですが、最初からぼんやりと「採らないとな」という考えはありました。 
 
【田代】
私は本当に仕事先行で、「足りないから人を採らなきゃ」という感じでした。三人採ったら一人辞めてしまったりして、その繰り返しで徐々に大きくなりました。採るポイントとしては、「自分ができない事をできる人なのか」ということをとても考えます。自分と同じことができる人がいても「+」にしかならないので、自分にできない事ができる人を採るようにしています。これからもそれを続けていきたいと思います。 
 
【野村】
私のところは、どういう人材を充てるかによって違いますが、労働力の確保という意味では、業務が増えてくる半年前に入れます。営業戦力としては、いい人がいれば即入れます。うちは上期だけで5人を雇ったのですが、中国、ベトナムの方も採りました。これは「商品」ですね。人を商品と言うと語弊がありますが、商品開発をひとつするような感じで採用しました。労務人材だったら半年前、半年間は教育期間として取るので、完全先行型ですね。先行が少し危うくなったら自分の役員報酬を下げます。 
 
【伊藤
役員報酬2億円くらいもらっていますからね、下げてください(笑い)。士業事務所は大体後手に回ることが多く、採用が結局労働力の確保です。そんなことでは事務所は作れません。採用は事務所の未来を作っていく仕事なのですが、優先順位が低く、忙しくなってから採ろうというなんの戦略もない事務所は、絶対に出来上がりがまずい事務所になります。 
 
【古殿】
僕も野村先生と同じで、先行で入れています。税理士が他の士業さんと違うのは、ストック商売なので、1カ月2カ月後の最低の売上が見えます。一人入れれば、1カ月2カ月でペイできるな、と計算しやすいので、あまり怖くありません。いい採用予定の子が二人いたら、とりあえず二人採ろうかなというスタンスです。集客よりも採用・教育の方が難しいと思っていて、基本的にはみなさんと一緒だと思います。 
 
【伊藤
では一度このパネルは終了したいと思います。瀧井さんと田代さん、野村さん、古殿さんは僕がすごく仲良くさせてもらっている先生で、とてもフランクなので、終わった後も質問にお答えいただけると思います。今の若手の先生たちのトップがどこを見てどういう動きをしているのかということは、常にアンテナを張っておくべきです。必ずつながっていただけるといいなと思います。ありがとうございました。
 
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