離職率を下げるためには従業員に理念と制度を定着させろ!

インタビュー
従業員の1名の企業から、全国規模の上場企業まで様々な企業ステージのクライアントを抱える五十嵐一浩氏に「士業事務所の採用を成功させ定着させる極意」についてお話を伺いました。

士業の立場で複数の上場を経験

【編集部】
本日はレビンコンサル社会保険労務士法人の五十嵐先生にお越しいただきました。よろしくお願いいたします。五十嵐先生のプロフィールをお伺いしてもよろしいでしょうか。
【五十嵐】
大学の時はバブルの時代で、野球だけやっていればどこでもいけたという時代でした。ですがバブルが崩壊しまして戦後最悪の内定率の中、マーケティングを行うベンチャー企業に行きました。その会社では、事業がうまくいき上場目前となりました。そんな中で派遣法原則自由化という流れになり、子会社として人材派遣会社を立ち上げて代表を務めさせていただきました。ベンチャー企業だったので基本的な労基法もわからず、社会保険労務士に入っていただき指導いただきました。そこで私はその上場準備にも関わったため労基法にも詳しくなり、ついでに社労士の資格を取ろうと思ったのが社労士になったきっかけでした。
2008年には社労士の予備校の講師をしていまして、その後2009年に独立をしました。仕事としては、今までの経歴があるため、上場予定の会社からオファーを受け上場のサポートをすることがメインです。また「上場したいから社外の役員で入って欲しい」と言われることもありました。
【編集部】
なかなか士業の先生で役員として複数の上場経験をした人はいないと思いますが、どのような経緯で務めることになったのでしょうか。
【五十嵐】
直近の上場で社外役員を務めている会社はベンチャーでしたが、上場する6.7年前に私は別のプロモーション会社にいた時に、社長とご縁がありました。私自身その会社から以前、引き抜きに合っていたのですが全てお断りをし、代わりに部下を送りました。その子は元々フリーターの子で自分が面接して「いいな」と思い社員にした子でした。そしてベタ付きで教育し、その子をその会社に送り込んだら、その会社がどんどん伸びていきました。いよいよ上場という段階になりその実績も踏まえた上で社外役員に呼ばれたという経緯があります。その部下は元々フリーターでしたが、その上場会社の役員まで上りつめました。

理念を浸透させるには

【編集部】
それは五十嵐さんの教育がよかったのですね。
レビンコンサル社労士法人は現在従業員の方が10名ほどいらっしゃいますが、人材の採用や教育、定着についてどのように取り組んでいるのでしょうか。
【五十嵐】
採用についてはお金をかけます。事業会社と同じでエージェントや大きな媒体を使って惜しみなくお金をかけています。
定着については離職率を見ますが、本当の離職率というのは新卒が部下を教えれるようになるまでのステージになってから辞めた人だと考えています。ですのでそのステージになる前に辞めた人というのは離職率には考えない主義です。
社員が残る残らないの基準は、理念や制度をきっちりやっていくと合わない人は辞めていきます。ですので定着は、その見極めが重要です。
【編集部】
理念は額縁に納まっている企業も多いかと思いますが、どのように理念浸透をさせているのでしょうか。
【五十嵐】
朝礼を重要視していまして、朝礼で1時間も話すことが多々あります。出張が多いですが会社にいる時は朝礼に出て最低は30分話します。仕事のことも含めて社会で起きていること、弊社の考え方、現場で起きていることを必ずリンクさせて話しています。
【編集部】
社員の方はその朝礼で浸透していくのでしょうか?
【五十嵐】
中々浸透は難しいと思いますので、繰り返さないといけません。次のステージとしては繰り返していき朝礼を個人の発表の場にしようと思っています。インプットしただけでなくアウトプットしないと意味がないからです。社員が主役になるような朝礼にしようと思っています。
それ以外でも研修なども社員が出来るようにしています。我々は教える仕事なので社内で教えることが出来ないものは、社外で教えることが出来ません。我々は世の中の会社に対して労務や人事のアドバイスをします。自社でやっていないにもかかわらずお客様に言っていることも世の中では多いと思います。ですが弊社はまず自分のところでやってみます。助成金などもまず自社でやってみて取れるとなって初めてお客様に提供しています。ですから取組もまず自社でやってみて上手くいったものをお客様に提供しています。商品開発と社員教育は弊社の場合はイコールになっています。

採用の失敗は投資額にあり

【編集部】
開業して1年2年した先生が採用を始める方も多いかと思いますが、最初は上手くいかないケースが多いです。最初の採用はどのように取り組んだのでしょうか。
【五十嵐】
最初は妻と、開業してまだ経験がなかった方にお手伝いに来てもらいました。その次にお手伝いをしてくれた方が出ていく時に社員を紹介してくれました。その方が弊社で一番長いスタッフとなっています。そこから次の段階では、初めての媒体を使った採用をしました。
採用で失敗しないことは単純にお金をかけるということです。企業の最大の仕入費は採用費です。商品ではありません。それを惜しむから失敗するのです。100万の採用費がかかっても採用した方が1000万を稼いで来たらそれでいいのです。投資は必ずリターンがあります。投資の額が少ないからリターンが少ないだけなのです。
【編集部】
いかに安くするのかではなく、いかに先行投資をするのかということですね。
【五十嵐】
そうです。これはどのビジネスも一緒だと思います。どのビジネスも一緒で先に払わないと入ってこないです。ビジネスは先に払って、リターンをどうするかということです。サラリーマンは予算の中でどうするかという予算主義ですが、早いうちに予算主義から投資主義に考え方を変えないとビジネスは大きくならないし、採用も難しいです。
【編集部】
他の先生の場合、採用してもすぐ辞めてしまう、または定着しないという方もいるかと思います。五十嵐先生はどのように育成をしているのでしょうか。
【五十嵐】
最初の「すぐ辞めてしまう」という点では採用はどんどんやった方がいいです。私は経営も採用も経験してから独立したから分かるのですが、最初はうまくいきません。採用についてはこなさないと分かりません。
また次の段階ですが、「続く」という点については、所長以外で「教える」ことが出来ないといけません。これはある程度人数がいないと教えることは出来ません。では「教える人」はどうするかという点ですが、所長と「同志」という関係でやっていかないと難しいです。所長と部下、アシスタントという関係でやってしまうといっこうに伸びません。所長以外の人間が教えられるようにならないと事務所は伸びていきません。
【編集部】
教えられる人を採用するか、自分が教えられる人になって業務は他の人に任せるかということですね。
【五十嵐】
その人が教える、その人が忙しかったら所長が教えるというようにしないといけません。所長はトップ営業であり、トップトレーナーであるべきです。
【編集部】
最初は所長が業務も行いながら教育もしなくてはならないので、なかなかタイムマネジメントが大変だと思います。五十嵐さんはどのように工夫されていたのでしょうか。
【五十嵐】
基本的に「休まない、寝ない」です(笑)
労働者ではないですし、やらされていないので過労死などしません。社労士の世界では多いと感じていますが、今の会社が不満で自分の自由な時間を過ごしたいという人がいますが、社員が10人以上になったら無理です。「休まない、寝ない」が当たり前でやらないといけません。自分の分身を作らないといけないからです。
何故採用しないといけないのか?それは自分の自由な時間づくりではなく、現場作業にとらわれない時間を作るためです。戦略を練る時間の確保です。いわば勝つためのシナリオを作る時間です。そのため、社労士の実務はほとんどやってませんね(笑)。電子申請、給与計算、助成金申請もわからないです。
また一日24時間なので優先順位を必ずつけます。パレートの法則(http://rules-of-success.jp/mental/pareto-law/ )で上位20%に力を注ぎます。そうしないと時間がいくらあっても足りません。

採用も事業計画が大事

【編集部】
採用した後、定着するようにしている取組は何でしょうか。
【五十嵐】
1人に対してメンターが付きます。資格の有無や人事労務の経験の有無など弊社は全く関係がありません。例えば野球のポジションと一緒で、ショートの社員が辞めたらショートの社員を入れ、ライトの社員が辞めたらライトの社員を入れようと思っています。これは明確です。なので経験は問いません。たまにポジションチェンジはしますが、それは作戦が変わる、つまり施策が変わる時です。
採用するときに漠然としていると、漠然とした人しか来ません。入って教育しても漠然と教えているので、本人も漠然としていて何をしていいかが分からないのです。とにかく分からないけど頑張るというのは絶対に長く続きません。ショートの社員を採用したらその社員はショートの練習をすればよいのです。いくつものポジションをやらないといけないのか、一つのポジションをまず頑張ればよいのか、これを明確にするということです。採用をする時もどのような人材を採用するのかを明確化していないと採用で失敗するのだと思います。
【編集部】
失敗しないように、どのような人材を採用するのか明確にするために何かされているのでしょうか。
【五十嵐】
事業計画を必ず立てます。そこには理念がありビジョンがあります。そこから逆算して何をやるかがあります。これは創業してから全く変わっていません。それに基づいて、そのポジションに対してはどのような人材がよいのか、何をしてほしいのか期待人材像というのが出てきます。それが評価制度に繋がってきます。採用するときにこのようなポジションにはこのような人がいいと明確化します。全て見える化をすれば良いのです。でないと入ってから何をしていいか分かりませんし、教える側も給与計算か助成金か何を教えるのか沢山ありパンクしてしまいます。
上司は部下に「これを改善してこれに取り組んで」というように具体的な指示を与えることができるかということが大切です。弊社では達成すれば、役職があがったり決算賞与などがあり、やっていることは事業会社と同じです。
社労士事務所は鍋蓋型(所長がいて後はパートさんというような組織)が多いですが、ピラミッド型にしたいと考えています。役員会があって民主的にそこで決定し、その下には管理職がいてと、ピラミッド型にしたいのです。なので敢えて事業会社と同じようなことを行っています。
【編集部】
他には従業員の満足度が上がるような取組は何を行っているのでしょうか。
【五十嵐】
やりたいことが沢山あるのですが、事務所の中に午睡用のハンモックを置いています。良く私の徹夜用の寝具になりますが(笑)。お米を購入して毎日炊いています。女性が多いのでお昼代に余計なお金がかからなようにしています。また、似顔絵世界チャンピオンを呼びました。似顔絵を書いてもらっている間、名古屋からキャリアコンサルタントを呼び、全員にキャリアコンサルティングをしてもらったり、終わった後飲みに行ったりしました。また福利厚生の一環で女性が多いので、ネイルも考えています。
また、飲み会をやるときは普通呼べない人を呼んで、話を聞かせてもらったりしています。芸能人や元プロ野球選手や、ビジネスの世界で名を知れている人を呼ぶなどは他の事務所ではあまりしていないかと思います。最近これをやっています。自分には人脈しか能がないので、弊社にしか出来ないことは何かと考えたときに、テレビに出ているような、普段は会えないような人を呼んでみんなで仲良くしてもらうようなことしかないなと思いました。

人脈は「こちらのためにひと肌を脱いでくれる人」

【編集部】
人脈しかないとおっしゃいましたが、どのように人脈は作られていったのでしょうか。
【五十嵐】
1か月で延べ60人に会おうという取り組みをしました。延べなので1か月に2回会う人もいます。その取り組みで社労士としての人脈を作りました。また今までビジネスをやってきた中の関係性がありますから、それが合わさったという状態です。
【編集部】
これから開業する方というのは、人脈作りは大切ですよね。これから人脈を作っていく中で大切にした方が良い事は何でしょうか。 
【五十嵐】
だいたい皆さん交流会に行った際に、名刺をティッシュのように配って終わりです。そして自分の話をしますが、それではノーチャンスです。
そして名刺には必ず写真は入れた方がよいです。メモリーフックが必要で、写真があれば捨てにくいということと、飲んだ次の日でも「あ、この人だ」と思い出しやすいです。そして名刺を渡した際に、自分の話をするのではなく、相手の話を聞くということです。散々聞く、ということです。どういったことを紹介すればいいですか?と自分がやって欲しいことを逆にこちらからやってあげるのです。お話を散々熱心に聞いてあげれば向こうも楽しくなって、親近感が湧いてきて、急にこちらの話を聞きたくなってくるのです。「脳がこっちを向く」とよく私は言っています。脳がこちらを向かないと何を言っても入っていきません。
名刺交換というのはティッシュ配りのように配り歩くのではなく、お会いした方に対してまず相手のことを聞く、するといずれ相手がこちらの話を聞いてきます。それは「脳がこちらを向いた」状態です。そして「今度会社に伺わせてください」と言うか「お昼でもどうですか」と言うことです。100人の人数がいる会場であれば5人はそのようなことをするとコミットして行かないと、全く意味がありません。
100人いる会場であれば、立食であれば乾杯するとすぐ隣の人と名刺交換をします。それは僕からするとNGです。僕は誰にも声をかけられないように料理を取るだけ取って、食べながら隅の方で様子を見ます。30分位すると泥水とそうでない水が分かれるように、誰がキーマンなのか分かってきます。また無名でも人が集まる人がいます。そしてそういう人の話しを聞いている人の表情なども分かります。そういう人たちだけにピンポイントで話かけに行くのです。そしてこちらの話をするのではなく、相手の話を聞くのです。
するとそういう人だと、気が合った瞬間にすぐに飲みに行きましょうとなることもあります。その人にお仕事をもらえなくても、その人に何かを売ろうとしてはいけません。その人に突然「社労士を買いませんか、助成金をやりませんか」と言ってもびっくりします。その人の背後に人はいるものです。そしてそれをやってしまう人は多いです。そして、人脈にも優先順位をつける必要があります。人脈と知り合いは違います。人脈というのは「こちらのためにひと肌を脱いでくれる人」のことです。そうでない人はただの知り合いです。
【編集部】
今はSNSで簡単につながりますが、力を貸してもらいたい時に貸してもらえるのが本当の人脈なのですね。
【五十嵐】
「こういう人を知っています」と固有名詞を出す人がいますが、誰に知られているかが大事です。発想が真逆です。「こんな人に会った」「こういう人を知っている」と言って有名人の名前を出すのは、僕は付き合えない人です。

やり方ではなく、「在り方」

【編集部】
勉強になりました。最後に記事を見ている人に学びになるような一言をいただいているのですが、開業する先生や、開業したての先生に何か一言いただけないでしょうか。
【五十嵐】
自信という言葉があります。開業したてや初めてのことをやるのは、誰もやったことがないので、出来る訳がないのです。結局は自信しかありません。自信というのは自分を信じることです。それを略して私は自信と思っています。
今までやったこと、そして出来たことを同じことをやって出来るというのは、自信ではなく「安心」なのです。出来て当然です。これからチャレンジする人は、新たな領域に出ています。なんでも初めてのことです。結局そこを打ち破るのは自分を信じるしかありません。そういう意味で「自信」を持つことが大切です。「自信」を持つということは、自分を信じることなのです。
【編集部】
出来る事、安心してできることに人は行きがちです。自分に自信をもってチャレンジしていくことが大切ですね。
【五十嵐】
やはり「やり方」ではありません、「在り方」です。自分のスタンス、態度です。損して徳取れという言葉がありますが、これはまさに在り方です。仕事を取るやり方を聞いてくる人が沢山いますが、やり方をパクってもあり方はパクれません。「この人に仕事を振りたい」と思う人間にならなくてはなりません。周りに支えられてきたにもかかわらず自分で勝てると思ってしまう人間は「過信」です。今までの経験から自分の可能性を信じれるのが「自信」です。新しい領域に行く人というのは、信じられるのは最終的には自分です。
【編集部】
私たちも自分を信じてチャレンジしていきたいと思います。
本日はレビンコンサル社会保険労務士法人の五十嵐先生におうかがいしました。
本日はありがとうございました。
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