40年続く士業事務所のスタートとは?

インタビュー
【編集部】
今はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
【副所長】
今は営業に力を入れています。なんとかお客を増やしていこうと考えています。40年やってきたのでクライアントも数十年やっている企業です。そのような企業は事業承継も難しく社長も年齢的に辞めてしまおうと思う企業が増えています。そうするとクライアントも減ってしまいますので、そのためにも新規の営業に力を入れるのと、既存クライアントのサポートをしています。企業の新陳代謝は仕方がないことですが、これからはクライアントに単純な税務会計サービスを提供するだけでなく、永続的に成長していくサポートをしていきたいと考えています。
【編集部】
最初0からスタートしてお客様を見つけてきて、顧問になるというのはどのようにされていたのでしょうか。
【所長】
まだ会計事務所や税理士という認識がお客様の頭には入っているわけではなく、割と自分で経理業務等をやっている企業が多かったのです。もちろんある程度の規模のあるところは違いますが。特に、バブルの昭和60年代とかの時代は一番企業がどんどん独立していったということはありました。そういう意味では時代に恵まれた部分もありました。
【編集部】
そんなに苦労したということではなくて、最初の知り合いから入っていき自然に紹介などが生まれ徐々に増えていったということなのでしょうか。
【所長】そうですね。今でも手法があるでしょうが、大手のアパート等の地域の営業所がありますよね。そこでお客さんを集めて講師などを結構やりました。そこでどんどん紹介してくれる方が多かったのです。
【編集部】
当時はお客様1社持つとして、今とは作業の工数などは全く違うと思います。何倍くらい工数がかかったというお話しや、顧問料などは金銭的価値も違うとは思いますが、(当時は)どのくらいだったのでしょうか。
【所長】かなり幅があったと思いますが、今よりも金額が相対的に高かったです。当時は税理士会で価格がある程度決まっていました。今は同業者の数も増え自由競争になっていますが、多少は影響が残っています。全く基準が分からないというよりは世間相場の中から価格が出てきますから、ある程度のところで報酬は決まってきてしまうとは思います。
見返りはそっくりということはありませんが、今よりは遥かに良かったのではないでしょうか。ただ一身専属権と言って医者や弁護士もそうですが、その方に対して資格というものがありますから、そういう面では自分の責任の範囲で本来出来ることが一番だと思います。中には拡大するというやり方を取る人もいましたが、(資格を)取った人の中では少数派だったと思います。人は使っていても自分の目の届く範囲でやっている方が大半でした。

軌道に乗るまで10年

【編集部】
順調にお客様が増えていってとても苦労したというよりは、40年間やっていく中で大変だったことは何でしょうか。
【所長】
そういう意味では今と違って会社にしても、組織が出来ていないことが中小は特に多かったので、まずは売上という企業もありました。今よりもはるかに脱税的に、そういう感覚はないにせよ結果的にそういうことになるような売上第一主義というようなこともありました。数字はよいのですが、会計はかなりいい加減という企業もありました。今は世の中が落ち着いてきて変わってきていると思います。そういう部分では非常に怖いという部分もありました。仕事を受けたはいいけれど、どうしようということがありました。いくらこれはまずいですと言っても平気でどんどん進めてしまったりする会社さんもありました。
勤めている時は局の査察にやられたり怖い目にあったりもしました。独立してからはそこまでの経験はしていないですが。
【編集部】
事業を始めて軌道に乗り始めたと感じたのは何年目で、どれくらいたってからなのでしょうか。
【所長】そうですね。5年経過して10年過ぎでしょうか。なぜかと言いますと、TKCの仲間がいてまだお金も稼げない段階だったのですが、TKC関連でアメリカに10日間位研修に行きました。向こうの会計事務所で5万人位いる大きい会計事務所でした。ロサンゼルスでは一棟のビルの中に5000人位の会計士がいるというところでした。そういう所の見学をさせてもらいました。そこの方たちと意見交換をしました。さらに、アメリカへ行った仲間5人程と帰ってきた後に全国の大きい事務所を行脚しました。九州から北海道まで10事務所位見せていただきました。そのようなところから仲間が出来ていきました。そういう仲間と情報交換をすることが軌道にのったきっかけでした。
【編集部】
たくさんの場所を見られて情報交換されたのですね。
10年で軌道に乗り、そこから30年位が経っていますが40年続くというのは相当難しいことだと思うのですが、出来ている秘訣や要因はどこにあるとお考えでしょうか。
【所長】
一つはやはり地域の人にいかに接触できるかだと思います。そして信用していただけるような対応をしなければなりません。仕事としては解釈の問題で塀の中に入るのかそうでないのかが変わるのですが、新聞で出てくる脱税などについては、「こちらに行くとこうなりますよ、今までたまたまよかっただけで分からないですよ」というような話をお客様にします。人間的にある程度信用していただき、対応するように心がけています。
【編集部】
お客様に信用していただけるというのは、本当に大切ですよね。
40年間やっていく中でお客様自体が、事業承継などで廃業されていくこともあったり、うまくいく企業もあるかと思います。お客様のサポートをされてきてどういう所に違いがあるのでしょうか。
【所長】
やはり若い人たちというか、お客様も波長もありますし年齢もありますし、事業承継するか廃業するかという課題を抱えている企業は多いです。時代の流れもありますが、企業として30年同じ仕事でやっていくのは難しいとは思います。私たちがやっていたところで廃業するか、赤字もありましたが借入もあり清算できずやむを得ずやっているという所もありました。清算したり事業承継したりという企業も多かったです。新しいお客様は年齢的に合いませんので我々の時代は終わっているのかと(笑)

中小企業に関わる仕事がしたい

【編集部】
副所長様に聞きますが、公認会計士を取られたというのは何か理由や実家で税理士事務所をやっていることが背景にあるのでしょうか。
【副所長】
そうですね。やはり働いている姿を見ていますので、そういう職業があるのかと考えていました。そこでサラリーマンになるのかそれ以外になりたいのかと考えたときに、それ以外の独立の道に行こうとは思いました。
決断のポイントとしては、前職の関係もあり、中小企業に関わる仕事がしたいというのが原点です。その時に一番よいのが税理士業かと考えそれでやろうと思いました。そして父親の事業をつぶすよりは引き継いでやっていこうと思いました。すでにお客さんもいるわけですから、その方たちに引き続きサービスを提供できればいいと考えました。
【編集部】
今は新規開拓をされているということですが、どのような取組やお客様のサポートをされているのでしょうか。
【副所長】
今の私のお客様は若く、自分より年下ということも多いです。その方たちは何も管理系のことを知らずに独立していることが多いです。それでも売上を作って利益を出しているのですごいのですが、管理面は全くなので、コツコツと教えながらやっています。そして信用してもらって紹介していただくことが多いです。やはり若い人たちの周りには独立したい人が多いですからね。
【編集部】
会計士や税理士の知り合いが多いのですが、それだけではなく実際にベンチャーの中でやっていた経験は他の方とは違う強みになっていると思うことはありますか?
【副所長】
実際の経理業務や銀行対応を経験したことは大きいです。外部からアドバイスをするのと、実際に中で担当するのではやはり立場が違います。また、細かい話なのですが銀行のネットバンキングの使い方、支払いまでの業務フローなど、一回触ってみないと分からないところが多いと思います。実作業の話は実際にやったことがないと分からないことが多いので、現場担当者レベルに視点に立って話ができる、その辺は強みかなと思います。

税務会計の枠にとらわれず、お客様の夢を実現をしていきたい

【編集部】
今後どういう事務所にしていきたいという点やお客様にこのような感動を与えたいということはありますでしょうか。
【副所長】
お客様の夢を実現していく手伝いをしていくことです。税務会計の枠にとらわれずお客様が上手くいくのであればなんとかしますという気持ちでやっていきたいと思います。
【編集部】
税務会計というと、競合も沢山います。普及により価格競争もあり価格破壊も起きているかとも思います。とても忙しいけれど儲かっていないという方もいて、付加価値が求められていくと思いますが、その点はいかがでしょうか。
【所長】
一つ一つの資格の人が単独ではなく総合的にやっていく形の方が、一概には言えませんが良いのかと思います。特殊な仕事をするときはまた違うのでしょうが。また、やり方はその人の考えで違ってくるとも思います。
【編集部】
また、このメディアを見ている人はこれから税理士や会計士の資格等を取ってこれから開業をしていきたい人や、既に開業していてこれから成長し継続して経営していくヒントを知りたいという方が多く見られています。これからの税理士界を担っていく若手に何かメッセージをお願いします。
【所長】
法律という枠の中でやるのが基本なので、それに基づいて行うことが基本です。後はその人の発想や考え方があると思いますが、ぴったり杓子定規にやるということではありませんが、基本はそれに基づいて行うことです。そのための資格なので、それが一番基本的な事かと思います。その範囲でやるということで資格が与えられる訳ですので。制度が変われば別ですが。

読者の方へメッセージ

【編集部】
これから始める方のモチベーションになったらいいという想いでお聞きするのですが、今まで大変なことがある反面楽しいと思ったことや嬉しいと思ったことは何でしょうか。
【所長】
どの仕事もそうだと思いますが、相手が提供するサービスによって喜んでくれて感謝してくれるのは、やっている仕事に対してプライドも持ててうれしいです。それがあるから皆さん頑張ってやれると思います。
【編集部】
副所長から何かメッセージはありますでしょうか。
【副所長】
仕事をしていて一番大切なのはコミュニケーションです。いろいろ方法がありますが、お客さんがどう思っているかを考えて行動すべきだと考えています。事務所でよく言っているのですが、特に電話してくるお客さんは急用の場合が多いです。今日何かが欲しいというお客さんが多いので、外出していても担当者が見れば何の用なのか分かる訳です。急ぎであればすぐに電話して資料を送るのであれば送り、時間がかかる場合であっても「いつまでには送ります」等そのような小さなコミュニケーションが大切だと思っています。
【編集部】
いずれAIの時代が来る可能性があると思います。そのために考えていることはありますか?
【副所長】
先ほどの話ですが結局コミュニケーションだと思います。集計や過去の事例から判断などは出来るかとは思いますがコミュニケーションを取ることができないです。何も知らない状態のお客さんには通じないです。そのお客さんに対して分かるように説明するということは、AIは出来ないと思います。そういう面からすると今やっていることについてコミュニケーションを取ってやっていけばよいと思います。
長い歴史の中での人間の本質は基本的には変わらないですからね!
【ミカタ編集部】
お話しを聞かせていただきありがとうございました。
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