25年以上続く士業事務所の秘訣とは

インタビュー
編集部:事務所が開業されてからちゃんと軌道に乗り始めたなというのは大体いつ頃からなんですか。
寺田氏:尊敬する80歳いくつの社労士の先生で、20年くらい前にたまたま何かでものすごく気に入ってもらって、自社ビルを持ってらっしゃるすごく有名な先生でね。その先生が言うには「寺田君ね、やっと私は70歳近くになって明日のことを考えずに寝れるようになった」って言って。それが人間の謙虚さなのかなとおもいました。だって誰が見たって3階建ての自社ビル持ってて職員が何十人もいて。10年くらい前の話だけど、それ聞いたら1年2年目の人がヤッタ!軌道に乗ったってそんなこと言えるのかなって思いました。
だから価値観がそこではないんだよね。物的なものではなくて、安心できるということなのかもしれません。社員のこと、お金のこと、いろんなこと、どれが欠けても気になってしょうがないです。だからやっぱりまだまだ発展途上なのかなって思います。
編集部:すごい謙虚なお考えですね。

コミュニケーションは大切に

編集部:最初7名でスタートされましたが、その後の採用はいつ頃から始めたのですか。
寺田氏:平成4年の時はバブルがはじけたんだけど景気に余力あって景気がすごく良かった時代、そこから3年ぐらい経ってほんとに終わりました。そしたらまた2000年、 ITバブルがやってきて、また頑張ってたらリーマンショックが2008年に来て、だから3回経験したんですね。そしてこの最後のリーマンの時が一番辛かったですね。
だけどその時に頑張ってこれたのはスタッフがいたから。多分自分1人でやってたら万歳してたと思います。こんな辛い思いしたくないなって。でもスタッフがいるとその人の思いとか家族とか考えると頑張んなきゃいけないって思いました。うちの父もよく言ってたけどやっぱり人を採用するっていうのは絶対リスクを伴うよね。だけど採用してみるとそれはそれで何かが付いてくるって言われました。だから一歩踏み出すか踏み出さないかは才覚の差が出る。1人雇って100万円かかっても200万円の仕事が生まれる可能性もあると。
最初7人は採用というわけではなく着いて来たんだけど、その時にそれを考えたね。やっぱり人を採用するといくらかかるって。じゃあいくらかかるから当然いくら売上がプラスにならないといけないってなります。
編集部:士業事務所で採用に悩んでる方は凄く多いんですよ。採用したけどすぐやめてしまったり、教育もうまくいかない。そういう部分で寺田さんがやってきたこととか、コミュニケーションの工夫とか何かあるんですか?
寺田氏:月並みな言葉かもしれないけど人の教育ってやっぱりだと思う。愛っていろんな意味があるんだけどね。僕の中でのコミュニケーションの定義付けって言うのは、投げた言葉に対して相手が響いてそしてそれをもって明日からアクション起こさないとそれはコミュニケーションではなく、カンバセイションの会話になってしまいます。
編集部:実際に寺田さんが社員の皆さんに対して1人ずつコミュニケーションを取ってるんですか?
寺田氏:それはもちろん物理的な問題もありますけど基本はそうしてます。だって入社してくれた縁だから。3人ぐらい独立していったのですが、そのうちの介護の会社の社長になった人も色んなことを教えてもらったのがものすごく役立ったっていて、特に考え方が役に立ってるって言ってくれて、それが一番嬉しかったよね。やっぱり人の成長に少しでも自分が寄与してるんだなと思うと本当に嬉しく思います。

行政書士からコンサルへ

編集部:今までで25年経って一番大変だった時期っていうのはどの時期ですか。
寺田氏:物理的にはリーマンショックのとき。上場会社とか不動産系とか有名なとこが業績悪化で契約解除になって、そこだけならいいけどグループごとパーンってなくなっちゃう世界だから、物理的な意味ですごく大きかった。
編集部:その時、何人も雇用してたと思いますが、それをどうやって乗り越えていたんですか。
寺田氏:一時的には妻が理解してくれて、俺の役員報酬全部使って給与とかに出しました。でもそこでほんとは銀行が貸してくれたんだろうけど銀行には頭下げたくないと思ったから自分の報酬を減らすしかないと思って、それでしばらくはやっていました。
それで、その時またアプローチを変えてこうって思いました。もともと行政書士もいいんだけどなんか味気ないなって。俺やっぱりコンサルやりたいなってのがあって、たまたま色んな出会いがあってコンサルの案件がいくつかできてきて、そこからまた許認可なり社労士業務の方にいったりだとか派生してきたんだよね。なんで巡り合わせが良かったのかというと偶然かもしれないけど必然かもしれないけれど、ただやっぱり全て前向きに考えてたから、辛いときこそ笑っているわけです。
編集部:コンサルティングは具体的にどのようなことをやっていたのですか?
寺田氏:参謀のようにある程度広く浅く何でも知っていて、「社長もっとこうやれよ」ってことをやりたかった。そういうトータルコンサルです。だからそれで社長の所に行って「お前おもしろいから顧問にならないか」って言われて、そういうところから入っていったりしました。そこから業務に派生するのです。
今はもうなくなっちゃったけど当時東証二部上場の不動産会社があって、そこの部長さんを紹介してもらって会ってみたら意気投合して、色んな話をしたら今度は「俺の知り合いの部長がいるからそれを紹介する」ってなりました。
それが当時のまたでかいグループの会社だったので、その関係から「お前おもしろいな、うちの子会社紹介するわ」ってなっていきました。
編集部:今は実際に新規のお客さんは取ってるんですか?
寺田氏:今も許認可とか社労士業務とか、新規のお客さんがなんか知らないけど来るんだよ、何にもしてないんだけどなんか来るの。何にもブランディングもしてないんだけど。
編集部:それはご紹介ですか?
寺田氏:紹介であったり紹介の紹介の紹介だったりとか「名前聞いたよ」とかって感じで。よくあるのは、今は顔見ないで全部やっちゃうじゃない、それはそれでいいんだけど僕らは元々25年間アナログでやってるからやっぱり顔を見て直接口説かなきゃって思います。お客さんにお会いしてお話しして仕事を頼んでいただくことに全神経使うし、それが僕の仕事だと思う。

事務所のコンセプトは損して徳を取れ

編集部:25年続く秘訣って何だと思いますか?
寺田氏:結局企業って持続継続性って非常に大事なことであって、持続継続って長い目で物を見れるかということが第一で、僕が言ってるのは損して徳取れって言うのが一つの事務所のコンセプトです。そのスタンスで必ずお客様を気持ちよくさせるまではお金を取るなって考えです。逆に奉仕でもいいんだって考えてます。
今こう近道をするとそれはそれでいいけど、うさぎと亀じゃないけど急がば回ったりとか気持ちの余裕とか長い目で見るのがやっぱり長く続く秘訣です。なぜかと言うとそういう人間に求心力があって人は寄って来るわけで、ああこいつだったらいいなとか、この人だったら尊敬できるなとか、腹黒くなくてやっぱり相手のことを考えてくれてるなど、その積み重ねじゃないかなって思います。
もちろん仕事の品質向上とかサービスの向上とか当然当たり前の話だけどね。
編集部:そうなんですか!その上でお客様に対してホスピタリティについては何かお考えですか?
寺田氏:やっぱりいざとなった時にあなたの力になれる、なんかあってもあなたの為に飛んでいくよっていうスタンスですね。よくあるのが社長と会った時に、「社長売上何%になりましたね」って言うと、なんで知ってるの?ってなるんだけど、僕はだいたい覚えてるんで見た瞬間に売上が倍増したねとか少しダウンしたねとかがわかります。それを言ってあげると、気にしてくれてるんだって物凄い喜んでいただけます。
編集部:気にかけてもらえてるってうれしいですよね。ちなみに何も用がなくても毎月会うとかはあるんですか?
寺田氏:基本的には、用は無くても行ったりとか電話かけて何かあったら何でも言ってよっていったり、今近くにいるから行くよなどと言い会っています。

お客様を生かさない限り、俺らは生きていけない

編集部:どのようなきっかけ・タイミングから先ほどの行政書士はあくまでも手段であってお客様にもっと貢献するか、喜ばせるかって思えるようになったのですか?
寺田氏:やっぱり三波春夫さんが言う「お客様が神様です」ってのを聞いたのがきっかけですね。お客様を生かさない限りは、俺らは生きていけない。俺らが生きてこの人がつぶれたらこれは本末転倒であって、だからそういう意味では金を儲ける話は、二の次でやっぱりまずはお客さんを喜ばせる。そしたらお客さんは懐があくわけです。それをあかせる仕事をやっていかないと価値の有る仕事ではないわけです。そこは意識してます。やっぱり最初からとは言えないけど割と早いうちからそういう感覚はありましたね。だからサービス業だって割り切ってる。だからバッジも要らない、お客さんの前では目線を高くしません。
編集部:長く続けている人や売上が良い士業の先生は、型にはまってない方が多かったりしますよね。あくまでも資格は手段ですみたいな。
寺田氏:まあ手段と考えれると、固執がなくなるんですよ。型にはまってたのがなくなるから可能性が広がるんでしょうね。○○士だからこれやっていいけどこれやっちゃだめってよく言うじゃん。それ関係ないでしょって。お客さんが望んでるんだから。だから資格が邪魔しちゃうんですよ。コンサルだと思えばいいんですよ。
編集部:25年続けてきて、もちろんいろんな士業の人のつながりがあると思うんですけど士業の世界って人が違うだけでやってる業務はほぼ同じじゃないですか。そういう中でこれからの時代、どんな事業が勝ち残っていけるか、所長として活躍していくような素質が求められると思いますか。
寺田氏:究極なこと言っちゃうと社長の懐刀になれるかなれないか。結局助成金ビジネスにしても結局いつか終わりが来ます。結局長く続くためにはやっぱり深く深く入ってくこと。社長が安心して相談できる人、会社、そういうのが絶対必要なんですよ。もっと社長が自分の方向性間違っていないかってサディスションしてくれる人が必ず必要なんですよ。基本中小企業は社内はみんなイエスマンばかりだから。
そこを外部でホントに信頼できて提案してくれる人、そういう存在にならないと。それは別に弁護士でも誰でもいいわけですよ。だからそういう選ばれしものになる、そのためには総合力を持ってなきゃだめなんだけど、それが行政書士分野も知ってる、司法書士分野も知ってる、社労士分野も知ってる、いろんなことを知ってかないといけないんで、いろんなことを経験してきた人がいいかなって思います。
専門的なブランディングはおもしろくないですよ。複合的なことをやりたい。社長に対して力になってあげたいのにここしか知りませんではすごく嫌だね。これからは総合力でしょ、だって結局建設業の業務っていつまで残るかわかんないでしょ。ビザだってTPP来てビザなんていらないじゃんって話になって入管中止になったらどうするのってなります。だからどこでもつぶしがきくようにやっていかないといけないかなって思うし、最終的には着地点を、お前に色んなことを相談したいんだよっていう話に持っていかないと。
編集部:そうやっていろんな話が舞い込んで来るといいますが、相談しやすい人間になるっていうのは素質というのでしょうか。
寺田氏:いろいろやってると見識が広がるでしょ、広がるからまた返してあげられる。一番いいのは、士業って士業の資料ばっか読んでるから、俺士業の資料ってほとんど読まないの。だからほとんど経営者仲間で色んな経営者とか業界の人とかと飲んでるよ。もちろんたまには行くけど基本的に士業と業界内ではあんまり飲まないね。
編集部:今日はお忙しい中ありがとうございました。
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