ちょっと待って!知っておきたい特例事業承継税制をとりまくリスクと対応策【第三章】家族間でもめるケースとはどんなケース?事業に関係のない家族にはどんな影響があるのか?

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第三章 争族リスク(他の相続人の相続税が多額になるリスク及び遺留分減殺請求リスク)

事業承継は、先代経営者と後継者間の事柄だと考えられがちですが、実は、その他のご家族・相続人にとっても、影響が大きく及ぶことになります。
良かれと思って、特例事業承継税制を使い、株式を承継したら、思わぬところで「争族」になってしまうこともありえます。

どういう場合にそうなってしまうのか、有効な対策は何かについてまとめました。

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(1)<ケース5>承継しなかったきょうだいから遺留分減殺請求としてお金を請求された

後継者である長男に、特例事業承継税制を使って、自社株を贈与し、集中させて承継した。先代が亡くなった。先代が遺した財産は、自宅の土地建物のみであった。自宅の土地建物は先代の妻が相続し、長男は生前に自社株の贈与を受けている。何も相続していない次男は、何も相続できなかったのは不服として、遺留分減殺請求をしてきた。長男は、借金をして弟に現金を渡すことになった

<ケース5>の対策

先代は長男に会社の将来を託し、後継にと選びました。そのため、自社株を贈与にて引き継がせましたが、次男に対する考慮ができていませんでした
妻や子供など、法定相続人には、遺留分といって「最低限いくらの財産を相続することができる」という「財産を引き継ぐ枠」のようなものがあります。

次男の場合、法定相続分は4分の1ですから、その半分の8分の1について、相続する権利があるのです。

先代の妻が相続した自宅土地建物が5,000万円、長男が引き継いだ自社株は1億5,000万円だとすると、次男の遺留分は、2億円の1/8である2,500万円です。

株式は換金することがほとんどできないにもかかわらず、何も相続できなかった、あるいは相続分が少なかったきょうだいは、不満を抱えやすいものです。事業を引き継ぐことは大きなリスクを抱えることでもあるため、プレッシャーも大きく背負うことになるのですが、だれもきょうだいの仲が悪くなってほしいと願ってはいません。
争族を防ぐためにも、きょうだいには配慮が必要です

この場合の対策ですが、いくつかあります。

・次男の遺留分に対応する生命保険を準備しておく

・経営承継円滑化法の適用を受け、長男が引き継ぐ自社株については、遺留分の計算に含めない「除外合意」を家族間で取っておく

経営の承継を円滑に進めるための法律、経営承継円滑化法の認定を受けることができれば、自社株について「除外合意」といって、遺留分の計算から除外する合意をとることが可能です。もちろん、合意に応じてもらえればの話です。いずれにしても、事前に株式その他の財産の承継・相続について、よく家族で話し合っておくことが大切だといえそうです。

「経営承継円滑化法」の機能としては、他にも「固定合意」というものがあります。
贈与で株式を承継したのち、長男の頑張りで株価が上がれば上がるほど、遺留分も多くなってしまいます。

長男の事業への意欲をそがないために、遺留分の計算上、株式の評価を「固定」することが可能です。事業を伸ばしたことにより増加した株式の評価額を、遺留分の計算上、入れないことが可能です

(3)ケース6 本当は先代は株式を現金化したかったケース

猶予税額をできるだけ抑えるために、先代である父に退職金を出した。また、配当も控えて株価を下げ、事業承継税制を適用し、全株式の贈与を受け、事業を継承した。しかし、父は株式を現金化してほしかったと言い、株式譲渡代金の代わりとして、毎月の役員報酬を要求してきた

<ケース6>の対策

事業承継税制は、株式を贈与や相続で承継させるとが前提となっているため、株式を無償で後継者に渡すことになります。当然ながら、現金化をすることはできません。株式を現金化したいと先代が考えている場合は、不向きとなります。

また、このケースの場合、先代が役員報酬を要求してくるなど、実質的に退任していないと認定されれば、退職金についても、役員賞与と認定されてしまうおそれがあります。

先代にとっては、会社はまるで自分の子供のようなものですから、簡単には渡したくない、できれば株式を現金化したいという願望もあってしかるべきかと思います。

どのように株式や事業を承継するのか、事前に家族でよく話し合うことが不可欠ですし、それを怠ると、トラブルのためになりかねません。
引き継がせる側、引き継ぐ側、それぞれの言い分もありますが、引き継いでもらう、引き継がせてもらうの気持ちを忘れずに、向き合うことができればいいですね。

第四章 事業承継そのもののリスク

この10年限りの時限立法である特例事業承継税制ですから、これを機会に使わなければと意気込む経営者もいらっしゃると思います。しかし、事業承継は会社にとって大きなテーマですから、事業承継を考えるきっかけにして頂き、タイミングが合えば使う、というスタンスが望ましいかと思います。

適用を急ぐとこんなケースが考えられそうです。

<ケース7>十分育っていない後継者を連れてきてしまい、なじめなくて退職してしまう

特例事業承継を使わねばと事業承継を急ぐあまり、まだ社会人として経験不足の長男を呼び寄せ、役員にした。事業承継税制の適用には「役員3年を経験していること」と要件があるため、急がせたが、なかなか会社になじめず、退職してしまった。

<ケース8>後継者の育成が不十分なまま、代表を譲ってしまった

特例事業承継税制の適用にこだわるあまり、まだ十分に育成できていないと思ったが「立場が人を育てるんだ」として、後継者を代表にした。従業員や取引先からの支持が十分に得られず、業績不振に陥りそうになっているところを、先代が何とか支えている状況である。

<ケース7・8>の対応策

事業承継には、まずは、家族間での十分な話し合い、それから社内への告知、社内からの受入れ、事業承継、承継後の先代経営者による伴走など、決して1年や2年では完結し得るものではありません。株式の承継というのは、事業承継を取り巻く要素の1つにすぎません。

先代経営者から後継者が引き継ぐものは、株式をはじめとした目に見える資産のみならず、経営権の承継、目に見えない理念やノウハウ、ネットワークなどの「知的資産」の承継も含まれます。決して一瞬で終わるものではないのです。

長年培ってきたものを承継するために必要なタイミングがあります。

いつ、どのように承継するのがよいのか、必要に応じて専門家の知恵も借りながら、先代経営者、後継者、そしてご家族、会社の幹部と十分な話し合いをし、共通認識をもって、チームで事業承継をしていくのが望ましいです。

先代経営者、後継者、ご家族などの年齢を年表にした表を作成し、それをたたき台として話し合うこともとても有益です。なかなか承継のことに向き合うのは勇気が要りますが、事業を円滑に続けていくのであれば、必ず通らねばならない道だと思います。

第五章 事業承継税制を使うときに配慮したいこと

(1)経済的なメリットのみを追い求めると、思わぬところで足をすくわれる

ここまで見てきたように、十分な検討・対策をせぬまま、大幅に使いやすくなった特例事業承継税制の活用に踏み切ってしまうと、思わぬところで「こんなはずじゃなかった」というケースに陥ります。
経済的メリットは目に見えやすいですし、わかりやすいものですが、一番大切なのは、事業を無理なく継続できるように引き継いでいくことです。
事業承継税制は、会社を円滑に引き継ぐための手段の一つにすぎません

(2)承継のベストタイミングを見極めよう

事業承継がうまくいくか、スムーズに進められるかどうかという課題は、会社の今後に大きくかかわる重要なテーマです。

先代経営者の年齢、幹部従業員の受け入れ体制、そして後継者の育成状況などによって、それぞれの会社の承継ベストタイミングは異なります。
早すぎても、遅すぎてもうまくいきません。

いつどのように承継していくのがよいのか、関係者間でよく話し合うことが大切です。

(3)自社、経営者、後継者、その他の相続人、4者それぞれメリット・デメリットを整理しよう

事業承継にまつわる利害関係者は、先代経営者と後継者に限りません。先代経営者の財産の相続が必ず関係してきますから、他の相続人にも大きな影響を与えます。

会社を継がないから関係ないのではなく、これまで先代経営者が築いてきた事業を、誰がどのように引き継ぐため、相続財産にはどういう影響があるのかを皆で把握することが望ましいでしょう。

そのうえで、会社、先代経営者、後継者、その他の相続人、4者それぞれのメリット・デメリットをまとめておきましょう。

自分の立場や取り分だけを主張するのではなく、これまで紡いできた先代の想いを、どう家族が引き継いでいくのか、お互いの立場を尊重しながら、建設的な話し合いが必要です。必要に応じて専門家のファシリテートを活用することも有効だと思います。

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